Midtown Report

ビジネスと人間に関する発見と考察 from Los Angeles & New York

カテゴリ： 映画三昧

Rent


ブロードウェイ・ミュージカルのヒット作の映画版です。
今、という時間を生きる若者たちの生き様が、素晴らしい音楽に乗せられて歌われます。

ニューヨーク・シティに住む若者たちが、貧困、ドラッグ、エイズ、同性愛、死が現実に存在する世界に苦しみながらも、前向きに前進し、今という時間を充実させていく様子が描かれています。

私は、特にそういった世界との接触がないため、何となく、このミュージカルに対しては、関係性を感じることができませんでした。
したがって、そこまで感動することはないのではと思ったのですが、歌の良さが圧倒的で、それですべてカバーされたような気がしています。

そして、"Rent"というタイトル。
家賃を払うのも困った人たち、という意味を暗示していると、最初思っていたのですが、実際には「全てが借り物」という意味なのかもしれません。

自分の所有物、健康な肉体、大事な人たち、人生そのもの、全てが借り物だということです。

限りある時間の中で、借り物である、この一瞬一瞬の出来事を大事にしたい、ということが、このタイトルに秘められた意味なのでしょう。

すばらしい作品です。
ぜひブロードウェイの舞台で、実際に見てみたいと思います。

昔のボスが、"Iwo JimaのMovieを見たよ"と電話をかけてきました。

このユダヤ系アメリカ人のボスは、私が以前にこの映画の話をした時に「Iwo Jimaは知ってるよ。原爆が落ちたところだろ」と言っていました。

「それは、Hiroshimaなんですけど…」と訂正したのは言うまでもありませんが、この人がこの映画を見るとは思っていなかったので、感想を楽しみにしていました。

「すごくいい映画だった。でも、一つ質問があるんだけど、何人かの兵士が、戦わないで自殺したシーンがあっただろ。あれは、実際にそんなことが起きたのかな。まぁ、ハリウッド映画だから、誇張はあるんだろうけどな。演出が過ぎると冷めるよ」

こういう感想が来るとは思っていなかったので、自分は意外に思いました。
確かに、戦わないで自害するのは、おかしいことなんだなぁ、と。
でも、日本人は、戦国時代の昔から、栄誉ある死として、切腹をしたりしているので、日本人にとってはそこまで不自然な光景ではない、ということを説明しました。

多くのアメリカ人にとって、あの状況での合理的な行動は、おそらく「降伏」でしょう。とはいえ、死ぬまで勇敢に戦う、ということにもある程度理解を置くことはできるようです。"Kamikaze"のようなマネはしたくないし、できないが、他の国の人間が執念でやっているのを理解し、敬服することはできるようです。

唯一理解できないのは、戦わず、降伏もせず、敵にも迷惑かけずに自決してしまう、ということ。

自分の手で自分の命を絶つのが美しいのか、結論はありませんが、すくなくとも日本人特有の美の形式なんですね。

もっとも、私は迷わず「降伏」を選びますが。

Letters from Iwo Jima

遅ればせながら、見に行ってきました。
この時期になっても、アカデミー賞を控えてか、アメリカ人の関心度は高く、深夜のAMC25は人で一杯でした。

この映画はすばらしいです。抑えた描写で、過度に盛り上げようとしていないところに、好感が持てます。

いろいろな人物像が出てきます。
玉砕覚悟で戦う者、勇敢に手榴弾で自決する者、上官を信用せず勝手に動く者、家族を思い自決できないでいる者、臆病のあまり投降するが殺される者、美しいものも醜いものもひっくるめて淡々と見せています。

その根底に感じられるのは、クリント・イーストウッド氏の日本人兵士達に対する大きな「敬意」と「愛情」です。

戦争映画は、反戦のメッセージを暗に含むことがありますが、これが反戦の映画だとはとても思いません。日本、アメリカのどちらが良い、悪いという議論でもありません。起こったことには目を向けて、祖国のために戦った一人一人の兵士達には敬意を払おう、といった問いかけであるように思えます。

靖国神社に首相が参拝すべきかしないべきか、という問題が未だにあるようですが、参拝することが日本の戦争礼賛・肯定化であるとする解釈自体が稚拙だと思います。

アメリカ人ですら、60数年も前に勇敢に戦った敵の日本人に対して敬意を払っているのです。それなのに、日本人が、自分の家族や、信念、祖国を守ろうという純粋な心を持って最後まで戦って散った人達に尊敬の念すら抱けないとしたら、その事自体が大変寂しいことではありませんか。

見たい映画をネットで予約しておくと、DVDが送られてくるというBlokbusterのサービスを利用しているのですが、先日届いていた封筒を開けてみると、

All The King's Men


という、見慣れないタイトルが。
こんな映画、そもそも興味をもった覚えもありません。
しかし、なんとなく聞いたことはあったので、見てみると、なんと白黒映画ではないですか。どうやら、1949年の映画です。

どういう経緯でこの映画を選んだのか、全く身に覚えがないのですが、仕方ないので見始めました。

最初は昔の映画らしく冗長なシーンばかりで、退屈になってきましたが、途中からだんだんと勢いがついてくると共に、ストーリーに引き込まれていきました。

田舎者の弁護士が、大衆を味方につけて知事に当選し、最後は腐敗にまみれて滅ぶ、という栄枯盛衰の物語です。
絶大な権力をほしいままにした主人公が、最後に破滅を迎えます。

最初は民衆のことだけを考え、理想に燃えていた政治家が、当選し、現実を目のあたりにする中で、効果性だけを追い求めるようになり、次々と手を汚していきます。
この映画は、古今東西どこにでも存在する権力者の一典型例を示しているようです。

期待していませんでしたが、「あたり」でしたね。

最近はほとんど行っていませんが、私の好きなミュージカルの1つに"Chicago"があります。これまでに何だかんだと理由をつけてAmbassador Theatreには4回も足を運んでしまいました…。Renee Zelwigerの出ている映画も、もちろん好きです。

この劇では、世間の注目を集めるためには何でもする人たちの哀れな姿が1つのテーマになっています。劇中の人物達にとっては、殺人すらも目立つための1つの手段でしかありません。女優、弁護士、彼らにとってはカメラのフラッシュを浴びることが最優先されるべきことで、それ以外のことは全てどうでもいいのです。

そんな彼らを見て、「この人たちは空虚だなぁ…」と感じながら、そこに投影された自分の虚栄心のバカバカしさに気づいてため息をつく、というのがこの劇の楽しみ方の王道(?)だと考えています。中身のない飾りだらけの自分を劇中の人物に発見して、笑い飛ばすわけです。

この劇の中で私の大好きな歌があります。
弁護士の歌っている"Razzle Dazzle"という曲なのですが、これが傑作なのです。


Give'em the old razzle dazzle
Razzle Dazzle 'em
Give'em an act with lots of flash in it
And the reaction will be passionate
Give'em the old hocus pocus
Bead and feather'em
How can they see with sequins in their eyes?

What if your hinges all are rusting?
What if, in fact, you're just disgusting?

Razzle dazzle 'em
And they'll never catch wise!


歌の意味としては、

「あいつらはすぐ熱狂するから、ニセモノでも何でもいいから、キラキラとカッコよく見せつけて、ごまかしてやろう。どうせ大衆にはわからないよ！」

のようなノリです。
こんな感じで歌は続きます。


日本でのテレビ番組捏造のニュースを見ましたが、どの時代、どの世界でも同じようなことが起きるものなんだな、と思わされます。

"the pursuit of happiness"というのは、「幸福の追求」のこと。
幸福を追求する権利、とはアメリカ合衆国憲法に（日本国憲法にも）記されている民主主義における基本的人権のうちのひとつです。

"The Pursuit of Happyness"は、ウィル・スミスの最新作で、実話を元に作られています。男はどん底の生活の中で、アメリカの憲法が幸福の「追求」を保障するだけで、幸福自体は保障してくれない、と嘆いています。

妻には出ていかれ、住んでいた家さえ追われ、絶望の淵にいた男が、6歳の息子を守るために生き抜く壮絶なストーリーです。

何千もの申請者がいるアメリカの名門金融機関Dean Witterのインターン20名に奇跡的に選ばれた男は、6ヶ月の無給試用期間に全てをかけ、夜は宿探しと勉強、週末は医療機器のセールスに奔走します。

モデルとなったChris Gardner氏は、業界では有名で、このストーリーも誰もの想像通りに進行しますが、ウィル・スミスの渾身の演技が、"Happyness"を最高に伝えてきます。クライマックスのシーンでは、観客席は拍手で包まれました。

アメリカのサクセスストーリー、ここにありです。
おすすめです。

"Don't let anyone tell you that you can't do something."

Rocky Balboa

Rocky、60歳のの6作目です。
Rockyは、それまで5作出ていましたが、1作目とそれ以外では作品の毛色が違います。
私の中では（多くの人が同意すると思いますが）Rockyの1作目がダントツにすばらしく、�兇呂泙，泙　↓掘↓犬倭漢灰瀬瓠↓垢脳�し持ち直した、という感じです。

Iは「愛の物語」だったのに、�兇�ら「ボクシング映画」になってしまったのです。
Iでは、Rockyが、Adrianに対して、また周囲の人たちに対して尽きることなく注ぐ無限の愛情が、一つの大きなテーマになっています。その上で、どう考えても絶望的な挑戦に対して死力を尽くして準備し、戦うというその姿が感動的で涙を誘うのです。

スポーツの奇跡を題材にするのであれば、現実のスポーツイベントを見た方が、よっぽどドラマチックです。Iはスポーツというよりも人間ドラマなのです。

Sylvester Stalloneが嫌いでRockyを見ない、と言う人はけっこう多いと思います。
ただの筋肉のカタマリ、ナルシスト、頭悪そう、などなど色々な感想を聞きますが、Rocky Iを見れば、只者じゃないことがわかるはずです。Iの脚本を書き上げたのは、彼なのです。

最新作の"Rocky Balboa"は、Rocky IをDVDで何回も見た私にとっては、前半から中盤でグッとくるところが多く、とても満足しました。
�兇農犬泙譴紳�子が就職して新入社員としてがんばっていたり、IでRockyに説教された後、家に連れ戻され、"ScrXX you creepo!"と言い放った不良少女も大人になって出てきます。

脚本は、割と伝えたいことをそのままストレートにセリフにしているという印象を受けました。なので、少しクサイかもしれません。
最後の戦いが割とあっさりしていたのが少し心残りですが、どことなくIの雰囲気を漂わせていて、とても満足しました。

The Secret

世の中で偉業を成し遂げた人たちが、どのようにしてそれを成し遂げたのか。
経済的な成功はどのようにして得られるのか。
歴史的に、それには、ある「秘密」があるというのがこの映画での主張です。

その秘密とは、"laws of attraction"。
「ひきつけの法則」とでも訳せば良いのでしょうか。

この映画での主張は、簡単にいうと、「思っていることが、そのまま人生で起こる」ということです。
ここまでいろいろな人が出てきて、同じことを言い続けているのを見ると、「そんなものなのかな」とも思ってしまいます。「思っていることがそのまま起こる」と言っても、単に願い事を唱えれば、それが何でも起きるということではありません。

心の底から、願望を強く持っていると、全ての思考や行動がそれにもとづいて動き出し、願いごとが向こうの方から自然とやってくるというのです。逆に、ネガティブな感情を持ち続けている人（怒り、嫉妬、憎しみ）は、そのような感情を呼び起こすようなことが次から次へとやってくるといいます。

たとえば、1億円ほしい、という人がいたとすると、多くの人は笑いものにするかもしれません。
しかし、本当に1億円をほしいと思っている人は、思考の全てが「1億円を手に入れる」という結果を達成するためにアンテナを張るようになります。そうすると、そのアンテナが、1億円をもたらしてくれるような情報や、人を何気ない日常の中からキャッチしてきて、いつしか本当に1億円を得るための具体的な行動をとるようになります。
願望を強烈に持っているだけで、段々とその対象が「ひきつけられてくる」、それが、"law of attraction"です。

心に迷いがあるとダメで、あたかも欲しいものが「すでに手に入っているような状態」であることが重要だということ、また現在持っているものに対して感謝をし、それだけで100%満たされることが大事だということに、なるほどなぁと感心させられました。

経営者や、成功した人の本などを読むと、確かに例外なく皆似たようなことを言っています。これは、アメリカ、日本など、国を問いません。
作りは若干チープな部分がありますが、わりと面白いです。

以前、"Borat"という映画の感想を書きましたが、私は完全に読み違いをしていたことがわかりました。

「ボラット」とイギリスのコメディ事情

これを読んで、ナゾが解けました。
実は、主人公の役者Sacha Cohenは、教養の高いユダヤ系イギリス人だったのです。

主人公の行動が常軌を逸していて、頭が悪そうな割には、どう考えても知能犯としか思えないネタがいくつかありました。

たとえば、主人公ともう一人が道中で「引き返そう」と相談するシーンがあったのですが、その時に「ニューヨークに戻ろう。あそこはユダヤ人がいない」などと言って観客の笑いを誘っています。これは、ニューヨークにたくさんユダヤ人がいることを知っていて、狙っているとしか思えず、無知に発せられた言葉とはとても思えません。


このブログによると、

＜以下抜粋＞

英国のお笑い界では、インテリジェントでお上品な背景を持ったコメディアンが自分の人種や性的趣向をネタにして笑い、あえてお下劣なギャグに挑戦するという伝統があります。

「ああ、あいつはインテリだけどお下劣ネタに挑戦する余裕があるね。
それに自分を笑う余裕のある大物だ」と評価される傾向があるのでインテリほど自分をネタにして笑います。

＜以上＞

なるほど…普通に見ると、ただの「乱暴で雑な映画」なのですが、背景を知ってから振り返ってみると、いかにこの映画の「乱暴で雑」が緻密に作られているかがわかります。

反ユダヤ的な描写があったのも、自分がユダヤ人だからこそ、堂々とやってみせたんですね。確かに、役者の苗字のCohen（コーエン）はユダヤ系の苗字だったので、どうもおかしいなとは思っていました。
そういう描写をすることによって、逆に人々の偏見を風刺しようとする意図があったわけです。

無知な外国人ネタを笑い飛ばすのも1つの楽しみ方ですが、そういうネタを笑い飛ばしてしまう自分達の「痛さ」に気づくのも、もう1つ突っ込んだ楽しみ方なのでしょう。

School of Rock


チラッとテレビでやっているのを見て、数年前に劇場で見たのを思い出してしまいました。大好きな映画です。

ただのロック好きの失業者が、臨時の教師として学校で勤務することになってしまい、子供達をロックバンドに仕立て上げる、というストーリーです。
ありきたりのストーリー展開かもしれませんが、素直に感動できます。

普段は、こういう中身のなさそうな映画（失礼！）は見ないのですが、昔ハイ・フィデリティという映画を見たことがあって、その時CD屋の店員をしていたジャック・ブラックの演技を強烈に覚えていたんです。
この映画には、ジョン・キューザック、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、ティム・ロビンスといった錚々たる俳優陣が出ているのですが、私が覚えているのは脇役のジャック・ブラックの演技だけなのです。
そのジャック・ブラックをまた見たいという思いだけで、"School of Rock"を見たのですが、正解でした。

ジャック・ブラックは日本で言うと竹中直人みたいな"怪演"をします。
とにかく自分のペースで突っ走ります。
背が低くて、足が短くて、頭も大きくてハゲかかっていますが、彼自身がもともと持っている音楽に対する熱い思いや人に対する愛情をそのまま表現できる俳優です。歌声もいいです。

この映画も、ジャック・ブラックのために作られた映画で、彼以外には絶対にフィットしなかっただろうと思います。最近、彼の映画がどんどん出てきていて、ファンとしては嬉しい限りです。

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