Midtown Report

ビジネスと人間に関する発見と考察 from Los Angeles & New York

カテゴリ: 情報解剖

鳥肌が立った出来事。



まさか、こんな光景を見る日が来るとは…感慨深いです。

上記の動画で、ホストを務めている男の名前は、ジェンク・ユーガー(Cenk Uygur)。
この番組"COUNTDOWN"の正式なホストではありません。
本当のホストであるキース・オーバーマン(Keith Olbermann)がお休みをとったため、ジェンクが代わりに臨時ホストとして入ったわけです。

この「ジェンクという男が、このCOUNTDOWNという番組でホストをしている」ということは、アメリカのメディア革命を象徴する大きな出来事なのです。
ちょっと解説したいと思います。


アメリカのテレビニュースチャンネルを見ると、報道の仕方が保守かリベラルかに偏っていることがわかります。もちろん、ニュースチャンネル自身は、思想にバイアスがかかっていることを否定しますが、見ていればわりと明らかです。

保守メディアの代表といえば、何と言ってもFOX NEWSです。保守派ですから、共和党の支持者が好むような思想(政府は小さく税金は低く、自由貿易、銃OK、同性婚ダメ、中絶ダメ、国民皆保険ありえない、レーガンがヒーロー 等々)を持ったホストをそろえ、ニュース番組を提供しています。

そのFOX NEWSの中でもボス的存在なのが、ビル・オーライリー(Bill O'Reilly)。



この動画のように、ゲストと喧嘩になることがしょっちゅうです。彼には熱狂的な支持者と、対極には多数のアンチが同時に存在しています。彼の"The O'Reilly Factor"というニュース番組は、ケーブルテレビのニュース番組の中で最も視聴率が高い番組ですが、好きな人も嫌いな人もみんな見るのでしょう。

ビル・オーライリー率いるFOXに対抗するのが、リベラルメディアの代表であるMSNBCです。CNNや、CBSもリベラル寄りですが、MSNBCは、ハッキリとリベラル色を打ち出していて、一部では「プログレッシブ」(急進的)という形容詞が使われることもあります。

2年前の大統領選挙では、MSNBCは大きな役割を果たしました。リベラルのMSNBCは、民主党支持者の好む思想(弱者に優しく、政府は市場を管理、規制貿易、銃ダメ、同姓婚OK、中絶OK、国民皆保険推進、オバマ、クリントンがヒーロー)を背景に、連日共和党およびブッシュ大統領を攻撃し続けたのです。

そして、MSNBCの急先鋒、キース・オーバーマンのニュース番組が "COUNTDOWN"。
ビル・オーライリーに負けないくらい濃いキャラクターで、共和党に関連する全てのことを否定し続けます(笑)。



ビル・オーライリー、ラッシュ・リンボー(この人はラジオホストですが、オーライリーよりもさらに過激)といった保守陣営をボコボコにしています。

ここまで来ると、完全にショーですから、安心して「懐疑的に」番組を見ることができます。バイアスのかかっていることが視聴者にわかっているから、テレビ局を変に疑う必要もなく、逆に安心なのです。アメリカのニュース番組を見ていて気持ち良いのは、こういう風にテレビ画面に出てくる人が、ポジションをハッキリと取り、それを表現することです。

もう一人MSNBCの強力なアンカー、レイチェル・マドウ。



彼女は、主要テレビ局・プライムタイムのニュース番組のホストとして、ゲイでありながら抜擢された初めての女性です。「存在自体がリベラル」で、保守派にとっては脅威なのです。


さて、ジェンクの話に戻ります。
ジェンクは、もともと、テレビ界の人間ではありません。

トルコ系アメリカ人としてNJで育ち、ウォートンMBA、コロンビア・ロースクールを卒業したエリートです。法律事務所勤務と同時に、ラジオ放送を副業でこなし、2002年に、インターネットでニュースとエンターテイメント情報を配信するザ・ヤング・タークス(The Young Turks)というニュース番組を立ち上げました。

ジェンクは、インターネットで、ニュース番組をゼロから作ったのです。
テレビのセットには到底かなわない、貧相なスタジオですが、ジェンクは持ち前の弁舌を生かして、YouTube上での視聴者をドンドン増やしていきます。収益は広告と寄付によって成り立っています。私も、ヤングタークスが結構好きだったので、3年前から会員になり、毎月10ドルですが寄付をさせてもらってます。
ジェンクの口癖は、"Let's keep it real"。建て前を排除し、全ての物事を本音で切り、誰に遠慮することもありません。


2008年、ヤングタークスはすでにネット上では一大メディアとなっていました。大統領選において、MSNBCなどの主要リベラルメディアの「援護射撃」とも呼べるニュースクリップを次々と展開します。
ヤングタークス自体は、2時間ほどのニュース番組なのですが、彼らはそれをいくつかの細かいニュースクリップ単位に動画を分け、それを次々とYouTubeにアップしたのです。共和党副大統領候補ペイリンを攻撃しているのが次のクリップ。こんな感じのクリップが、YouTubeからは山のように出てきます。



ジェンク率いるヤングタークスの影響力は、日に日に大きくなり、テレビ局も無視できないほどになりました。昨年から、テレビ局のニュース番組に、ジェンクがコメンテーターとしてゲスト出演する回数がだんだん多くなっていったようです。

そして、今年の7月(6月だったかな)、The Dylan Ratigan ShowというMSNBCのテレビ番組で、ジェンクが臨時ホストをつとめました。ネット出身のアンカーが大手テレビ局のニュース番組ホストを任されるという、歴史的瞬間です。

アメリカの番組ホストはよく休みをとります。そうすると、代わりのアンカーが臨時ホストとして入るわけですが、当然経験や人気が乏しいアンカーが入るので、視聴率は落ちるのが普通です。ところが、臨時ホストとしてジェンクが入ると、視聴率が大幅に伸びるのです。ネットでの支持者が、「ジェンクが出るんなら、見よう」と思うのでしょう。こうなったら、テレビ局としてはもう無視することはできません。

こうしてジェンクは、MSNBCの看板番組であるCOUNTDOWNのホストをつとめるまでになりました。昔からジェンクを支持していた自分としては、鳥肌が立つほど感動的な出来事です。
ネットで視聴者ゼロからスタートし、頭脳と弁舌で視聴者を増やし、ついにCOUNTDOWNの臨時ホストにまでのぼりつめたジェンク。MSNBCが、ジェンクの新ニュース番組を作るのは時間の問題といわれています。



ジェンクがテレビ界に行ってしまうのは、ネットのファンとしてはさびしいところです。でも、遅かれ早かれ、ジェンクはテレビの仕事をやめ、ヤングタークスに完全に戻ってくる日が来るのでしょう。その時こそ、テレビの時代は終わり、本当のメディア革命が起きたと言えるのかもしれません。

ふと、古本屋に立ち寄って、2冊の本を手にしました。
第一冊目がこれ。

告白 (文春文庫)
告白 (文春文庫)
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この本、何気なく古本屋で手に取ったみたのですが、メチャクチャ面白いです。ちょっと数ページだけかじってみるはずが、喫茶店で一気に最後まで貪るように読んでしまいました。

大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件を引き起こした井口氏の告白です。この本、やたら文章が洗練されていたので、大学からアメリカ生活をしていて、その後銀行業務にどっぷり漬かっていた本人が本当に書いたのかな?と勘ぐってしまいました。全体の文章の構成(時系列的なコンテンツの配置)や事件の細部にわたる説明や所々に見られる「技あり」な比喩表現方法など、自分の目からするとあまりにもうますぎて、アマチュアのライターでは絶対に書けないのではないかと疑ってしまいました。もしプロのライターが手を加えたとしたら、逆にそのプロのライターは、他にどんな著作を書いたんだろうと、興味を持ってしまいました。

あちこちで、ニューヨークの聞きなれた地名やストリート名が出てきたので、事件の情景が一つ一つ思い浮かび、よりリアルに迫ってきたのも、自分にとってこの本が面白かった要因の一つです。あの時、あの場所で、あんなことが起きていたんだと…自分も同じような立場に追い込まれていたら、同じような行動をとっていたかもしれない、そう思うとゾッとします。現在の金融機関のガラス張りの管理体制だったら絶対に短期間でバレていたはずの無断取引を、彼は12年間も隠し通したのです。最初は、5万ドルの損失を取りかえそうと行ったことが次々と裏目に出て、損失は最終的に11億ドルにまでなってしまうのです…想像を絶します。

表紙の絵は、おそらく事件当時にNew York Timesで使われたという本人の学生時代の写真です。無垢な23歳・マッシュルームカットの写真は、この男が11億ドルもの巨額損失をひきおこしたという事実と対比されて、逆に不気味な雰囲気をかもし出しています。


奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
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先ほどの井口氏の本を読んだ後は、「やっぱり、会社は社員の管理体制をしっかりしないとな」という読後感で一杯でしたが、この本は、完全にその逆をいくものでした。
自分自身、同じタイミングでこの一見相反する2つの本を買っていたことに驚きました。この本の著者リカルド・セムラー氏(セムコ社CEO)は、経営をする上で、従業員に対するコントロールを完全に手放すべきだ、ということを主張し、実際に経営の場で実践して成功を収めています。

会社で働く従業員一人一人を良識のある「大人」とみなし、ほぼ全てのオペレーションを、6-10人単位の集団ごとに責任を移譲してしまうのです。この会社では、出勤時間や仕事内容、さらには給料まで従業員が自分達で決めてしまいます。事業計画、売上目標、ミッションステートメントやクレドも全くなしです。そんなことしたら、従業員に好き勝手に会社を利用されてしまうのではないか、と思うかもしれませんが、このセムコという会社では、きちんと機能しているらしいのです。

あまりにも違う世界が描写されているような気がして、そんなことが果たして可能なんだろうかと最初は眉唾ものでした。しかし、本を読み進めていくにしたがい、具体的事例の数々によって、否が応でも納得させられている自分に気づきました。社員が不正を働いたことも当然あったそうです。しかし、それは当事者同士で問題を解決させ、経営者として、それを契機にコントロールを押し付けることはないそうです。

先ほどの本に述べられている大和銀行の事件も、セムラー氏であれば「ウチの会社でそんなことは起きるはずがない」と言うでしょう。つまり、心から自分がやりたくて就いた仕事で、その内容に誇りを持ち、売上目標を自分で決めていて、会社から押し付けられるものが何もない状況であれば、無断取引をするなど、トレーダーにとって何の意味もないことだからです。

数々の成功者の本を読んで、今まで疑問に思ってきたことがあります。成功の尺度として、たくさんのお金を持っているとか、大きい家や良い車を保有することを良しとし、中にはそれをことさら誇張する経営者がいます。ところが、それを以って皆の模範になるのは、無理があるのではないかと思うのです。物質的な豊かさを手に入れることができなければ、即人生が不幸であるということなのでしょうか。それならば、全ての人が幸福を享受することはできない、ということです。そんな立場を経営者自身がとっていたら、そこで働いている従業員は、「全員が勝つことのできないゲーム」を強いられ、敗北の恐怖におびえながら仕事人生を送ることになりそうです。

「不労所得を得て、幸せなお金持ちになろう」みたいなことが数年前に流行しましたが、あまりの思想の浅さに、私自身は辟易します。こういうスローガンを掲げる人は、意図はしていないと思いますが、実は全ての人が勝てるわけではないゼロサムゲームに人を誘っているのです。一見、明るいその言葉の影には、勝ち負けの世界があり、その裏にあるのは、敗北に対する恐怖と不安です。

私は不労所得が悪いと言っているわけでは全くありません。ポイントは、提案しているゲームの本質が「お金を得る」ことなのか、「自己表現をする」ことであるかということです。前者は全ての人が勝てないゲーム、後者は全ての人が勝てるゲームです。これによって、決定的に幸福度が変わってくると思うのです。

私は、仕事(もしくは人生)の醍醐味は、仕事自体を自分の自己表現と完全に一致させることだと思っています。自分を表現することが、そのままお客様への貢献になる。お客様への貢献が、報酬となって返ってくる。仕事で幸福をもたらすのは「これだけ」だと思うのです。報酬は二の次で、自己表現が第一、この順序が決定的に重要だと思います。

自己表現は、誰でも、どんな職業でもできます。新しい事業に挑戦したい!ということが自己表現だという人がいます。お客様と会話をしたい、接客をして気持ちよくなった欲しいということが自己表現の人もいます。データエントリや事務的な仕事をすることや、掃除をすることが自己表現だという人もいるでしょう。それぞれの性格によって、どんなことが充足感をもたらすのかは違ってくるはずです。

セムコ社のマネジメントは、まさに全ての従業員に自己表現の機会を提供し、徹底的に満たしてくれるやり方であると思います。こんなすばらしい企業を作り、現在も維持しているセムラー氏に敬意を表したいです。

この本の中で、元GEのジャック・ウェルチ氏の「下位10%のパフォーマンスの従業員はクビにする方針」を断罪している箇所がありましたが、このくだりは圧巻です。

ぜひ、皆におすすめしたい本です。

Michale Bubleにハマってます。

彼はカナダ人、名前の発音は「ブーブレィ」のレを強調します。
アメリカではかなりメジャーです。「最近の曲が良く分からない」という人も、彼の曲はちゃんと良い曲として聞けるはず。Mixiに266人しかファンがいなかったので、ビックリしました。

彼は、絶対日本でもヒットすると思います。
ぜひ、注目してください。



今、ハマっているのがこれ。

Pandora
"It's a new kind of radio - stations that play only music you like"

友人のNateがBlackberryでこのアプリを利用していたのですが、「すごくいいから試せ」と言うので自分も、iPhoneにアプリをインストール。

有線放送とか、ラジオの音楽番組ってありますよね。基本的にはそういう形で次々と曲を流すサービスです。でも、普通のラジオ番組と何が違うかというと、「自分の好きそうな音楽」を探し出して、提供してくれる点です。

使い方は、こうです。私は、Billy Joelが好きなので、"Billy Joel"と入力します。そうすると、"Billy Joelっぽい"音楽がずっと流れることになります。

この例で実際に試してみると、一曲目は、Billy Joelの"Keeping the Faith"という曲が流れます。一曲目が終わると、今度はElton Johnの"Don't let the sun go down on me"が流れます。その後は、Bruce Hornsbyの"The Way It Is"。さらにその後はThe Beatlesの"In My Life"。こうして、次々とBilly Joelっぽい曲が流れるわけです。
全部、何となく曲の調子などがよく似ています。

歌手でなく、具体的に「この曲と似たような曲をもっと聴きたい」と思えば、最初の入力画面で曲名を入力すれば良いのです。そうすると、その曲と似たような曲がランダムで次々と流れます。例えば、Jamiroquaiの"Canned Heat"を流すと、その次の曲はMaroon 5の"This Love"という風に(何となく似てますよね)。

このサービス、何がそんなに良いのか。

今の時代、好きな曲だったら大抵の場合YouTubeにアップされているし、iTunesで買うこともできます。でも、それは聴きたいと思ってその曲を選んで聴いているわけで、新鮮さ自体はないのです。ラジオを聴いている時の「あ、この曲いいな〜」という驚きや偶然性が全くありません。

でも、Pandoraだと、自分の好きなタイプの曲をずっと聴けると同時に、名曲と出会う時のワクワク感や偶然性がうまく演出されます。たまに、「ああ、この曲は、この人たちが歌ってたのか」ということがわかったりと、発見があります。

ラジオを聴いてしまうと、全く興味のないジャンルの曲もどんどん流れるので、退屈してしまう。CDやiTunesだと、すでに流れる曲を知っているので、新鮮味はない。そんな微妙なわがままを持つ人に、ピッタリです。

Web上でも利用できるし、iPhoneやBlackberryでは、データ通信で音楽が自動的にダウンロードされ、本当にラジオのように聴くことができます。


ストリートビューで小平市を探検した話を書きましたが、もともとは、Mr. Childrenの歌を聴いているうちに、昔のことを思い出して、小平の情景が浮かんだことから、ちょっと見てみたくなったのです。

CDの棚を整理していたところ、「売上アップ云々」、と書かれたビジネス系のDVDがあって、「そうだ、これを久しぶりに見てみよう」と思ってケースを開いたところ、DVDではなく、ミスチルの"Atomic Heart"というアルバムCDが入っていました。

CD管理の悪さを露呈したわけですが、それは置いておいて、久しぶりにOverやらCross Roadやらを聴いてみると、よく聴いていた頃の情景がよみがえってきました。

Mr. Childrenの曲は何がいいのか、といえば、やはり歌詞がいいと思うんです。
愛とか夢とか希望とか歌う人がいたりしますが、ミスチルはそういうことについて歌っても「こんなこと表面上は言ってるけど、裏では実はこんなこと考えてるんだ」みたいな、普段人が言わないような、隠したいと思うようなことまで見事にさらけ出して詞にしてしまってるところがすばらしいと思うんです。

…って、こんなこと、ミスチルファンなら、誰でも知ってることで、改めて言うまでもないんですが、その表現の仕方とか、「今の自分の全てに正直であろう」という真摯な姿勢は、すごく憧れるんですよね。

自分について完璧で美しいことばかり言ったり、なんとなく聴き触りの良いことばかりを言ったりするのではなくて、実は裏でどうしても持っている欲望だとか、適当さだとか、劣っているところだとか、そういうことも全部含めて自己表現できる、という所に自由さを感じます。しかも諦めや絶望だけに終わるような青臭さがなくて、「それでも生きていくんだ」というような、いつも新しい道を模索しようという姿勢が伝わってくるんです。


完璧な言葉ばかり並べる人は、嘘くさいと思うんです。例えば、政治家というのは、完璧なことばかり言う人達の代名詞だと思うんです。相手の政党がAと言えば、自動的にBと言い、相手は100%間違い、我々は100%正しいと。私に投票すれば、明るく開かれた未来が待っていると言うわけです。

誰も、自分の欠点なんて述べないですよね。いつも万人に完璧な自分を見せなくちゃいけない。そういうところに、ものすごく大きな嘘くささを感じるわけです。
だから、逆にマスコミだとか、解説者だとかが、「あの政治家はあんなこと言っているが、裏では利権がからんでいる」「今回の発言は、選挙を前にして〇〇層にアピールする狙いがある」なんて解説をいつも加えなくちゃいけない。

麻生さんが小学校を訪問したら、「これは庶民派としてのアピールだ」とか「またこれは彼のパフォーマンスだ」などと周りは思うわけです。だから、本人がアピールのつもりでも、全くアピールになっていない。支持率は下がる一方です。これは、下心を隠しているように見えるから、余計に白々しいわけです。政治家という職業の構造上、これは仕方なく、個人の責任でないとも言えます。

でも、そんな場面で、もし麻生さんが「僕は小学校訪問しているけど、これは実はアピール目的で、本当は小学生になんかこれっぽっちの興味もない。でも、小学生に会ってみたら、エネルギーがたくさんあって、触発された」なんて本音を自分の言葉で言ってくれれば(これが本音なのかは知りませんが)、少なくとも見ている側は、「表裏がないんだな」と思って彼の言葉に対する信頼度は増すと思うんです。

オバマ大統領は、そういう意味でやはり非常に成熟していると思います。「自分は完璧じゃない。国民の努力と忍耐なくして変革はありえないから、力を貸してくれ。共和党も正しい意見だったら、取り入れるから出してくれ」と言ってのけるオバマ大統領は、嘘くささがありません。2人の閣僚が税申告問題で辞職しましたが、その人事でも言い訳せずに"I screwed up"(「私の大失敗だった」)なんて言えちゃう人なんです。やはりこういう姿勢だからこそ、多少失敗しても(現在もたくさんの失敗を毎日しているように見えます)、国民からの本当の信頼を得られていると思うんですよね。

ビジネスマンでもそうです。どっかからコピー&ペーストしてきたミッション・ステートメントを掲げたって、本当にその人がそのことを思っているのかな、と人は疑ってしまうわけです。中には、名経営者の言葉をそのまま引用して社是にし、その割には顧客ないがしろで金儲けばかり考えている人もいます。それだったら、「稼ぐが勝ち」と誰に対しても表裏なく言えてしまう元ライブドア社長の堀江氏の方がよっぽど軸にブレがなく、人として信頼ができます。

ドロドロとした裏の心を全部さらけ出して、それで太宰治みたいに「生きててすいません」みたいに圧倒的にネガティブな結論に落ち着くのも困りますが、彼は「走れメロス」のような理想の友情も描いたわけで、「負の部分もあるけど、がんばっていこうよ」みたいなベクトルの向け方にはすごく共感します。

自分のブログでも、本当は自分のうまくいっていることだとか、自慢話だとか、楽しいことばかり書きたくなってくるんですが、いいところも悪いところもなるべく全部出そう、という努力は、これでもしているつもりなんです。表現と言う意味では、まだまだ学ぶ点ばかりだと思っています。


話をミスチルに戻します。

ミスチルの歌は、年を経るごとに、どんどん世界観が変化しているなぁ、というのを、ファンなら誰もが感じると思います。紅白歌合戦には出場しない、とずっと言っていたのに、昨年末は出場していました。紅白に出ない、というポリシー自体が、彼らにとって意味のないこだわりに変化したのかもしれません。

そういえば、自分としては珍しく、この前、音楽雑誌を買いました。
桜井和寿氏のインタビューが載っていたからです。

ROCKIN'ON JAPAN (ロッキング・オン・ジャパン) 2009年 01月号 [雑誌]ROCKIN'ON JAPAN (ロッキング・オン・ジャパン) 2009年 01月号 [雑誌]
販売元:ロッキング・オン
発売日:2008-12-20
おすすめ度:5.0
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紅白のことについては書いてありませんでしたが、デビュー以来のアルバムとその世界観の変遷が、桜井氏自身の口から語られている、貴重なインタビューがこの雑誌に載っています。表現者としてのエゴと、ファンの満足を満たすことを、同時に達成しようとしているんだなぁと、納得しながら読みました。


最後に、

「ミスチルの(シングル以外で)この曲ちょっといいんじゃないの・個人的ベスト10」

1. ティーンエイジ・ドリーム(I〜II)<Kind of Love>
2. 彩り<HOME>
3. Over <Atomic Heart>
4. 星になれたら<Kind of Love>
5. ありふれたLove Story 〜男女問題はいつも面倒だ〜 <深海>
6. Everything is made from a dream<Q>
7. ラララ <DISCOVERY>
8. もっと<HOME>
9. one two three <It's a wonderful world>
10. 幸せのカテゴリー<BOLERO>



いいのかな、これリンクして…?

24時間週7日営業、のことではありません。

FOXのドラマ"24"のシーズン7がついにはじまったのです。
昨年いろいろあって、放映が延期されたので、ジャック・バウアーが帰ってくるのは実に1年半ぶりになります。

24は、他の政治ドラマと同じように、その時代の政治背景をプロットにうまく取り入れることでも知られています。

昨年オバマ大統領がアフリカ系として初めて大統領に当選しました。その裏では、24の初期シーズンでDavid Palmer(Dennis Haysbert)が大統領になり、その賢人ぶりが、多くのアメリカ人に「誠実なアフリカ系大統領」のイメージを植えつけ、「アフリカ系大統領の受け入れ体制を作った」いう説もあります。

実際には、視聴率からするとそこまでの影響はなかったんじゃないかと思いますが、人気ドラマでアフリカ系大統領が実現したということは、現実でも国民の準備が整っていたということなのでしょう。

今回のシーズン7が捉えている時事ネタは、「拷問」。

シーズン7が始まった頃、ちょうど前政権のCheney副大統領が、「テロ犯に対する拷問」を認めるような発言をしたことで、物議をかもしていました。具体的には、テロ対策の一環として、必要とされる情報を得るために、収監されているテロ犯に対して、「水責め」を行ったというのです。

新しい司法長官であるEric Holder氏(ちなみにこちらもアフリカ系初)は、上院の公聴会で「水責めは国際法上、れっきとした犯罪である」と言いました。「日本でも(戦時中)水責めを行ったものは、戦犯として処されている」と。

上院の一人がこれに対し、「でも、本当にアメリカ国民が一刻を争う危険に瀕していて、拷問が唯一必要な情報を聞き出す手段だとしたら、水責めをするしかないのではないか?」(この質問自体、24を意識しているのは明らか)と聞くと、Holder氏「水責めだけが、必要情報をとりだす唯一の方法である、という前提条件を私は受け容れることができない」と実に賢い切り替えしをしました。

この公聴会の前後で、メディアでは「拷問は犯罪か?」「拷問は有効な手段か?」ということをよく取り上げていたのですが、総じて「拷問は犯罪」「拷問は、必要な情報を聞き出すために、有効どころか、効率が悪く、間違った情報を得る可能性が高くなる」「拷問よりも、正確な情報を短時間で犯罪者から得る方法はたくさんある」という結論を各専門家が出しています。

そして、オバマ大統領が就任第一日目に行ったことが、グアンタナモ・ベイの閉鎖を宣言する大統領令。高い支持率を持つオバマ大統領が、拷問の横行するこの収容所の閉鎖を宣言したことで、世論は完全に「拷問反対」の風潮となっています。

これは、24というドラマにとって、かなり不利な展開です。24は、拷問なしには考えられないドラマだからです。ジャック・バウアーが拷問できなかったら、いや、もし拷問をしても、視聴者に拷問を認める考え方が失われていたら、ジャックに対する共感も薄れるというものです。

24のシーズン7は、このジレンマを真っ向からとりあげるようです。「拷問の是非」がドラマ開始から、大きなネタとしてとりあげられています。シーズン7の制作時期は1年以上も前だと思いますが、プロデューサー側もこの問題が、前政権のトップを巻き込んだ議論になるとは考えていなかったのではないでしょうか。ドラマにとっては世論が不利に傾きつつも、このこと自体をネタとして取り上げているので、もしまだ撮影しているのであれば、逆に挽回のチャンスがありそうです。

具体的にストーリーがどのように展開していくかに関しては、ファンの方のために、もちろん黙っておくことにします。

今日チラッとLarry King Liveを見たら、幼い娘を殺された父親のインタビューを少しやっていたので、しばし見入ってしまいました。

3年前に起きたこの事件ですが、父親は憤慨がおさまらず、被告に怒りをぶつけていました。「被告が死ぬまで苦しみを味わうことを心から願う」「極刑を望む」と強い口調で言っていました。
彼にはそういう言葉を使う権利が十分にあるように思えます。幼い娘を拉致され、暴行され殺害されたことを考えれば、被告を許すことなど決してできるものではありません。

しかしながら、思い出してしまうのが、1年前くらいに見た別の裁判の様子。
息子を殺された母親が、被告席にいる連続殺人鬼に向かって、「正直に全てを語ってくれてありがとう。私はあなたを許します」と言っていたのです。

これには驚愕しました。彼女には、被告を憎む理由と資格がいくらでもあるのに、「全て許す」というのです。


悪人を憎むのは、自然なことであるように思えます。
それなのに、悪人に対する恨みで心が満たされている人には、自由も希望もなさそうに見えます。

逆に、恨みを手放して許しを与える人には、希望に満ちた人生がこれから広がっているように見えます。


親族を殺されて「犯人を恨むな」「許せ」などと、経験者でない私はとても言えるものではありません。
しかし、逆立ちしても変えられない現実が目の前にあるのもまた事実。
それに対しては、パワフルに意思と行動を選択したいものだと思いました。

アメリカ人とのテキストメッセージやインスタントメッセンジャーによるコミュニケーションを頻繁に行っていますが、彼らは、実際に会って話すと表情や声使いが非常に豊かであるのに対し、テキスト上では実に淡白だったりします。いまだに慣れないのが、彼らの絵文字。

Thank you so much :)

最後の

:)

は、目が2つにニッコリしている顔が横になっているのですが、日本人にはしっくり来ませんよね。見逃して放っておくことでしょう。日本人だったら、

(^O^)

と描いている所かもしれません。しかし、これは彼らにとっては手が込みすぎなのでしょう。この絵文字のパターンには、不機嫌なタイプ

:(

もあります。
鼻つきタイプもあります。

:-)
:-(
:-X

アメリカ人で、このパターン以外の絵文字を使う人をほとんど見たことがありません。日本の絵文字の方が多種多様で個人的には面白くて好きです。

今度、

(´・ω・`)
( ・Д・)

と描いてみて、どんな反応が得られるか試したいと思います。
ドキドキします…。

数週間前、The Church of ScientologyとBBC Panoramaという番組の攻防が、話題になりました。

BBC Panoramaという権威のあるドキュメンタリー番組の記者が、Scientologyの実情をレポートする、という内容なのですが、その攻防が実に面白いです。
何が面白いのかというと、記者側から見たScientologyと、Scientology側から見た記者の姿が両方ウェブサイト上にアップデートされているからです。

このBBCの記者は、John Sweeneyというのですが、Scientologyの取材中に完全に正気を失ってキレるシーンがあり、記者にあるまじき行為として問題となっています。

<Scientology - BBC Panorama Exposed>
http://www.bbcpanorama-exposed.org/watch-the-video-documentary.php

<BBC Panorama - Scientology and Me>
もはやYouTubeからは削除されていました。

<CNNのレポート>
http://www.youtube.com/watch?v=hU0Vh-laTDY

通常、犯罪を隠している集団を記者が取材しようとすると、取材を拒否したり、記者から人が逃げ回る、というのが、よく見られる光景です。この記者は、Scientologyをそのような集団として初めからみなし、それにもとづいて取材を試みているように見えます。

Scientologyは、スポークスマン自身がカメラを引き連れて、記者と真っ向から対峙しています。「初めからオープンに門戸を開いて、会いたい人にも会わせると言っているのに、なぜ勝手にあちこちで偏見にもとづいた取材を試みるんだ」というのがその主張です。言い分はもっともです。

宗教の自由が保障されている世界において、初めから偏見と曲がった仮説にもとづいた取材を行ったとすれば、それは記者として失格と言わざるを得ないと思います。

2つの側のビデオを見ると、何が真実なのか、よくわからなくなってきます。
私のポイントは、BBCやScientologyが良い/悪いということではありません。

情報ソースの限られる一般人が、2つの相反する視点に同時に触れることができる、というのは非常にフェアな社会だと思うのです。そういう、情報社会は健全だと思います。

共同通信のニュースから。

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 サムスン、ヒュンダイは日本のブランド? 世界的なブランドがどの国のものか、米国の多くの大学生が勘違いしている実態が、米調査会社のアンケートで明らかとなった。

 それによると韓国の電子機器メーカー、サムスン電子の「サムスン」は57.8%、自動車大手の現代自動車など「現代(ヒュンダイ)」は55.7%の学生が日本のブランドと思い込んでいた。フィンランドの通信機器「ノキア」、米通信機器「モトローラ」も日本製との答えが一番多かった。トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」は37.3%が日本製と答えたが、米国製と答えたのも33.7%あった。

 どの国の製品が良質かとの問いには、日本と答えたのが81.8%で最多、次いで米国(78.5%)ドイツ(77.1%)だった。調査したアンダーソン・アナリティクスは「どの国のブランドなのか知識がないか、単に米国か日本、ドイツのものだと考える傾向がある」と分析している。

 調査は06年後半、約1000人の大学生を対象に実施した。(共同)

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Nokiaはともかく、Motorollaまで日本製だと思われるのは驚きですね。
私は、brotherが韓国の企業だとアメリカ人ボスに教えられ、それを信じきっていました。

東京に住んでいた頃、コンピュータのモニタとして、Samsung製を買いました。その頃の17インチの価格としては安く、品質が良かったのをおぼえています。
ただし、NECやSonyなどの日本製のモニターが並んでいる中で、韓国製の製品を買うのはどうも裏切り者のような気がしてなりませんでした。

アメリカ人にとっては、製品がよければ、どこの国で作られたものであっても良いということをこの記事はさしています。なぜ、各企業の国籍が問われているのかわかりませんが、あまり有意義とも思えません。製品がうまく働く、ということ以外に意味はないと思います。

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