法廷格闘

July 04, 2006

一人裁判所

以前、"一人観覧車"という記事を書いたことがありますが(一部からはもうしつこいと言われそうです)一人で日本の裁判所を傍聴しに行ったことがあります。

あれは、大学4年生の終わりごろのことでした。
友人はみな卒業旅行に行っていたのですが、私は特に旅行にも興味がなかったので、自宅でビデオを見たりと、気ままに過ごしていました。

ウチでダラダラしていると、ふと"無意識君"が、

「おい、お前何もしないんだったら、裁判でも見に行けよ」

と言います。
また突拍子もないことを…。

「高校の時、裁判はタダで見にいけるって習っただろ」


数時間後、私は東京地方裁判所の前にいました。

中に入ってみると、受付らしき場所のあたりに、今日とり行う裁判のリストが書いてあります。
リストを見てもよくわからないので、とりあえず、適当にエレベーターに乗って、いくつかの法廷を覗いてみることにしました。

法廷の中には、誰でも自由に入れます。一部の有名なケースだと、抽選になりますが。
私は、生の法廷シーンに、胸を躍らせていました。

ある法廷の中から、声が聞こえてきたので、そこにこっそりと入りました。

中にはある犯罪を犯してしまったとされる被告が、うなだれています。
裁判は、ちょうど始まったようです。

その後、原告が出てくるはずだったのですが、なぜか原告は被告の顔が見たくないらしく、なかなか出てきません。

裁判官は、「どうしましょうかねぇ」などと言っていて、弁護士に「困るんですけど」などと話していました。テレビでは本物の裁判は見られないため、こうした裁判官の人間味ある言葉というのが、いちいち新鮮でした。

その後、いくつかの法廷を出入りしました。覚せい剤でつかまった息子のために、母親が泣きながら懇願する姿があったり、検事が厳しく被告を追及する姿があったり…。

アメリカの陪審員選定プロセスを経験した後で思い返すと、日本の裁判は、けっこう淡々と進むなぁ、という印象がありました。どちらかというと、弁護士・検事は裁判官に対して主張をするため、彼らの間で言語が通じれば良い、といった感じで、特別な感情表現もありません。


それに比べて、アメリカの裁判は、陪審員を巻き込むため、わかりやすい言葉で、感情的に表現する部分が非常に大きかったと思います。今後、裁判員制度が導入されると、弁護士や検事も、表現力、というのが大きな要素になるのでしょう。


裁判所は、決して楽しむためにあるところではありませんが(反省)、社会のしくみを実感する上で、とても良い場所であると思います。社会についてのいろいろな示唆を得たい人は、足を運ぶのもおもしろいかもしれません。


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May 04, 2006

still don't get it

北米トヨタ自動車に対するセクハラ訴訟。

昨日の情報は、記事がどうも不完全だったようで、どうやら、キャリアに対するダメージは、$10Mだそうです(それでも、吹っかけすぎだとは思いますが)。

今日は、Punitive Damageに注目しましょう。

Punitive Damageというのは、「懲罰的損害賠償金」という意味で、被告に反省と改善を促すために適用する賠償金であるため、「被告が行動を改めるに十分な金額」であることが必要です。

で、原告の要求額は、$150M。
約170億円。カローラを約1万2千台買える値段です。

原告の弁護士によると、トヨタは大企業であるため、そのくらい払わないと、行動を改めるほどの「懲罰」にはならないというのです。なるほど、これは確かにそうかもしれないです。
確かに、賠償金としてここまでの大企業に100万円を払わせても、財政的には痛くも痒くもないでしょう。

しかし、まだどうもしっくりこない部分があります。
この違和感を、論理的に説明するのはきっとムリで、おそらく心情的なものなのですが…現場で、細かい単位でコスト削減に毎日腐心されている従業員の皆さんを思い浮かべると、ここまでの大金が、容易に要求されていいのか、と思ってしまうのです。

きっと私は、現場社員の汗で積み重ねられてきた会社のお金が、貪欲な弁護士の口先三寸で、根こそぎとられるというイメージが頭に浮かび、その構図がとても気に入らないのだと思います。

まぁ、私が現場を見たわけでもないし、弁護士の素性も知らないので、こんなことを言う資格はないのかもしれません。優良企業も、中身は外から見るより複雑なはずですから。

重々承知はしていますが、後味の悪さだけは残ります。


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May 03, 2006

just don't get it

こんなニュースがありました。

http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/4967602.stm


間違った情報が簡単に錯綜しそうな事件なので、出回っている情報の真偽が全くわかりません。原告の主張が本当なのか、それとも何か裏の意図があるのか、限られた一方向の情報だけでは、結論は出せそうにないでしょう。

しかし一つだけ、記事で書かれていることに、どうしても解せない部分があります。

記事の一節:

"Ms XXX is seeking $40m for injury to her career, plus $150m in punitive damages."


原告は、トヨタでのキャリアを失ったことによって、$40M(46億円)もの被害を被ったと言うのです。
私にはどうしても理解できないのですが、これは、セクハラが存在しなかったら、原告がそれだけの給料を、将来的に会社からもらっていたはず、ということでしょうか?

ということは、ひるがえって考えてみると、原告の、人材としてのトヨタでの価値が将来的な期待価値を含めると、46億円以上ある、ということだと思うのですが(でなければ会社はその人材にそれだけのお金を出すはずがありません)。

そして、それほどの市場価値をすでにお持ちと考えているのであれば、そもそも、「キャリアへのダメージ」などないと思うのですが…私のロジックはおかしいでしょうか…。

一般的な、家族を抱える中間管理職の生命保険ですら、多い人で$2,3Mです。
人が亡くなっても、2、3億円なんです。人の命に値段をつけるつもりはさらさらありませんが、現実的には、これが適正と呼ぶべきレベルだと思うのです。

社長秘書が重要なポジションであることはわかりますし、セクハラが極めて深刻な問題であることも理解できます。だから、数千万円、数億円ならまだ何とか理解できる(それでもかなり高いはずです)のですが、46億円あまりの金額を請求するというのは、会社の好業績につけこんで、簡単にお金を得ようという裏の意図があるのではと、どうしても疑わざるを得ません。

アメリカでは、とにかく儲かっている企業を狙って集団訴訟を起こしたりする輩がいますが、どう計算しても、理解の範疇を超える訴訟を起こし、自分自身に対する信頼低下を招くことは、ビジネス人として、戒めるべきことだと思います。

とはいえ、私は法律の専門家でもないし、セクハラに対する意識も薄いのかもしれません。どなたか、この賠償金額について、納得できる説明を下さる方がいれば、ご教授ください。


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March 21, 2006

Jury Summons II


先週、また陪審員の召還を受け、法廷に行ったのですが、「裁判のケースについては、口外してはならない」と、釘をさされました。

前回、ブログ上で、ケースが特定されないよう、かなりの脚色を加えたとはいえ、それなりに具体的な内容をアップしてしまいました。
誤解を受けたくないので、後でさらに余計な部分は削りたいと思います。

今回のJury Summonsでは、連邦で管轄されている裁判所に呼ばれました。
連邦で管轄されているというのに、都市部ではなく、田舎の町にありました。
電車で1時間揺られ、駅からタクシーで行きました。

陪審員は、市民の義務であり、仕事から半強制的に離れなければなりません。
だからかどうかはわかりませんが、一応1日40ドルという手当てが出ます。
また、交通費も支給されます。

しかし、こういった手当が支給されるのは、実際の出廷日から数えて、4,5ヶ月後らしいのです。
こういう支払いの遅れというのは、常套手段とはいえ、あまり気分が良くないものです。

政府は、ゼロ金利で市民から短期融資を受けているということですから。
「金利を0にした覚えはないんですけど」と言いたくもなります。

ケースについては何も、ここで伝えることができず、残念ではあります。
ただし、すでに終わったので、あと数年は、召還を受けることはなさそうです。



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February 27, 2006

Jury Summons II


一瞬、目を疑いました。

Jury Summons(陪審員の召喚状)が、また来ました。

前回は、NY州Queens郡の裁判所から召還されましたが、今回は、Summons(召喚状)の送り主が、"United States District Court"です。
つまり、一個レベルが上の裁判所に呼ばれたわけです。

私は、一回陪審員を終えたら、その後は、5、6年後召還されないのかと思っていました。
しかし、郡・州レベルと、連邦政府レベルでは、管轄が違うのかもしれませんね。

次は、何が起こるのでしょうか。面倒ではありますが、楽しみでもあります。



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January 29, 2006

Jury Summons 総括

Jury Selectionの翌日、9時半に出廷すると、また、大きな法廷で待たされることに。
30分くらい経つと、係員に呼ばれ、"参加証書"を受け取り、帰ることになりました。

今回、はじめて陪審員というアメリカ人の行事に参加したわけですが、ちょっと感想を述べたいと思います。

<待ち時間が長い!>

今回、陪審員候補として出廷するにあたって、周囲のアメリカ人に、「陪審員の仕事ってどんなものだ?」と聞いたのですが、皆そろって口にするのが、「待ち時間が長いよ」ということ。実際に行ってみると、合計で8時間くらいでしょうか、非常に長いことだだっぴろい法廷の中で待たされました。実際に陪審員として必要な人数の3倍くらいを集めていると思われるので、一気にガバッとたくさん集めて、集めた中から適当に裁判のケースを割り当てているような印象を受けました。おそらく、陪審員候補に対して、ケースを割り当てるプロセスが、自動化されていないのでしょう。IT政府化がかなり進んでいるこのアメリカでも、まだまだ改善の余地はありそうです。


<スポーツ的面白さ>
今回、陪審員選定というプロセスに、実際に居合わせることができて感じたのは、弁護士のエネルギー。原告・被告双方ともに、スタイルこそ違いましたが、何が何でも勝つ、という気迫を感じました。と同時に、弁護士という職業の本来的な「おもしろさ」を垣間見たような気がしました。

日本は、そもそも弁護士になる上でのハードルが高いために、まず「世界の違い」を感じます。したがって、私自身、今までは、弁護士業そのものの面白さよりも、日本一難しい司法試験や、一旦試験をパスした後の地位の高さ、一生食べるに困らない安泰の生活、などのイメージが先行していました。

しかし、この陪審員選定プロセスを通してみたのは、「論理を展開して、人を説得することって、おもしろくて、快感かもしれない」「弁護士業って、メチャクチャ面白いかもしれない」ということです。

私は企業コンサルティングに従事しておりましたが、人を説得するということは、必ずしも論理的なプロセスではなく、実際には人的要素や、いろいろな泥臭いコミュニケーションが必要となってきます。しかも、お客さんの業績が上がったとしても、そこにはいろいろな要素が存在して、必ずしも自分たちの提案が良かったとはいえません。

しかし、裁判には必ずルールがあり、審判(判事)がいて、最後は白か黒か決着がつき、弁護士の主張いかんで、全ての結論が変わってしまいます。それはある意味スポーツのようです。
かつて、OJシンプソンや、タバコ会社訴訟など、数々の難しい裁判があったと思うのですが、下された結論はどうであれ、勝った弁護士は、さぞかし気持ちが良かったのではないかと思います。一度勝ったら、やめられないのでは、とさえ想像してしまいます。

<陪審員の苦悩>
そのスポーツ的おもしろさの一方、陪審員は、一人もしくは複数の人間の運命を大きく変える決定に関わってしまうことに対して、大きな恐怖感と、苦悩を持っています。参加していた女性の中には、陪審員選定の自己紹介の時点で、震えてまともに話のできない人もいました。これまでに、ミスジャッジや、判定の覆りが、少なからず起こっているはずです。

自分の下した決定で、一人の人間が、間違って死刑室に連れて行かれるかもしれない。殺人鬼を野に放してしまうかもしれない。こんな重要な決定は、誰が行うとしても強い精神力が必要なことです。


<陪審員という制度について>
養老孟司さんが何かの本に書いていたような気がしますが、民主主義では、「みんなが正しいと思っていることが正しい」んですね。法律もその解釈も、人の価値観も、時代によって変わります。陪審員制度は、完璧な制度ではないし、賛否両論はありますが、「その時代に生きる一般庶民の良識をもとに、正しいか正しくないかを決められる」と言う意味では、すばらしい制度だと思います。日本が裁判員制度を導入しても、その良さが保たれることを願っています。


今回の陪審員選定プロセス参加で、なぜ、アメリカでこれだけ法廷小説・ドラマ・映画がここまで普及しているのか、理由がよくわかりました。犯罪という非日常性、原告・被告側の、スポーツのような論理ゲーム、そして自分自身の意思決定参加、という要素が、アメリカ市民を魅了し続けるのでしょう。



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January 28, 2006

Jury Summons(9)

法廷の中に入ると、傍聴席に沿って並ぶように指示されました。

判事のアシスタントのような人が、1枚の紙切れを持っていて、そこに、選ばれた8人の陪審員の名前が書いてあるようでした。

私の名前は、呼ばれませんでした。

やはり、「データ重視の男」と見られ、原告側から嫌われたせいでしょうか。陪審員の8人は法廷内に残り、今後の予定を指示されたようです。

残りの、選ばれなかった私を含む十数人は、次の日の9時半に、再度法廷に来るように求められました。

陪審員の8人は、これから、数日間にわたって、原告・被告両側の主張を聞き、この小柄な被告の運命を決めます。彼は、飲酒運転をしていたのか?していなかったのか?

どんな結論であれ、この裁きが、彼自身の人生に、大変な影響を与えることは間違いありません。
この8人が、公平な判断をしてくれるよう願い、私は法廷を後にしたのでした。



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January 23, 2006

Jury Summons(8)

たたみかけるように、弁護士は主張を行います。

「皆さん!本件の焦点は、被告が果たして本当に『ビル内で』タバコを吸っていたかかどうかということです。原告側が、被告の喫煙を科学的に証明することができなければ、彼が無罪になることに、異論のある方は、皆さんの中にいますか?」

またまたわかりにくい質問に頭が混乱したのか、迫力に押されたのか、ともかく陪審員一同シーンとなります。

「そうですか。Mr. X、あなたに質問です。あなたは、某有名銀行にお勤めとのことですね。あなたは、データによる検証や証拠を大事にされますか?」

Mr. X  「ええ、そうですね」

「わかりました。今度は、Mr. F(私)、あなたの仕事は、フィナンシャル・アナリストですね?」

私 「いえ、まぁフィナンシャル・アドバイザーと言った方がいいかもしれませんけど」

「あなたは、仕事の中で、数字の分析や、検証を行いますね?」

「えー、まぁそれも仕事のうちかもしれませんね」

「わかりました。質問を終わりにします」

どうやら、弁護士は、この一連の質問によって、陪審員候補のうち、誰がデータ重視の人間かを見極めようとしたと思われます。なぜなら、原告側の「匂いで喫煙者かどうかわかる」という主張に対して、「数値的根拠がなければ、喫煙者だと断定できない」と反論したいからです。

しかし、よく考えてみると、そんな質問をこの場でしたら、逆に原告側にとって不利な人間がわかってしまいます。

しかも、「フィナンシャル関係の仕事に勤めているから、データや数字を絶対的に信用する」なんて、ちょっと短絡的な論理であるような気もします。数字を頻繁に扱っているからこそ、数字データの信頼性の無さも、逆によくわかるはずなので。

私は、どちらにしても、この時点で、原告側の弁護士には嫌われた、と思いました。

この後、質問は終了し、陪審員候補は、外で待つように指示を受けました。
この間、被告、原告および判事が話し合いを行い、8人の陪審員を決めます。

外で待つこと15分間、廷吏に呼ばれ、再び部屋の中に入って行ったのでした。



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January 22, 2006

Jury Summons(7)

弁護士の、我々に対する質問は、さらに続きます。

「この中で、警察官の言うことが、ほとんど信用できるとはいえない、という人はいますか?」

またまた回りくどい聞き方ですが、日本語にすると、こんな感じです。
要するに、陪審員候補が、警察官の言うことをどれだけ信用しているかを、質問しているのです。

私は、以前警察官にはひどい目に遭ったことがあるので、完全に警察官を信頼しているわけではありませんでしたが、なぜか手をあげる気になりませんでした。

この質問には、一人女性が手を挙げ、「警察官だからって、信用できるとは限らない」と意見を述べていました。

原告側弁護士は、その後いくつかの質問を行い、席につきました。

さて、次は、被告側の弁護士です。
被告側の弁護士は、体格が良く、背も高くて威圧感がありました。

彼は、立ち上がると、陪審員候補に向かって、熱く語り始めました。「皆さん!本日は、わざわざこの市民としての義務を果たしに来られ、大変ご苦労様です!私は被告側の弁護人をつとめさせていただいております」

「早速質問ですが、皆さんの中に、被告がもし喫煙者であるという科学的根拠がなければ、無罪になるということに、賛同しない方はいますか?」

いつも、弁護士の語り口調は、こんな感じです…。つい最近、コールドリーディングについて書かれた本が売れていましたが、それに似たものがあります。つまり、一瞬、質問された方は、否定がしにくいんです。

その前に、わかりにくいのですが。

この質問は、つまり、「タバコ吸ったって、言ってるけど、計測器で調べてもいないのにどうしてわかるの?科学的根拠がなければ、無罪だよね?」と、聞いてるのと同じです。

ただ、こうやって質問してしまうと、陪審員候補としては、手を挙げるという「作業」が発生してしまうから、賛成者が、少なくなってしまうんでしょうね。




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January 20, 2006

Jury Summons(6)

まず、陪審員に質問をはじめたのは、原告側の弁護士です。

このブログ上では事件の内容が一切特定されないよう、事件の内容を大幅に変えて、フィクション仕立てで、書きたいと思います。
以下の内容は、実際に起こったこととは無関係ですが、雰囲気が伝わればと思います。

ここでは、この被告が、タバコを公衆のビル内で吸って逮捕された、ということにしておきましょう。



「この中で、タバコを過去に一度も吸ったことのない人はいますか?」

一人が、手をあげました。

「わかりました。この中で、誰にも迷惑をかけずに、個人的にタバコを吸うことがよくないと思っている人はいますか?」

だれも、手をあげません。

「この中で、タバコの匂いを知らない人はいますか?」

1人だけ手をあげます。

「わかりました。それでは、ある人が、息を吸っただけで、喫煙者かどうかわかる、と考えていない人はいますか?」

なんだかひどく回りくどい聞き方ですが、和訳したらこんな感じだと思います。
つまり、弁護士の人が聞きたいのは、

- ある人と話をした時に、口臭で喫煙者であるかどうかを判断できるか?

ということなのです。警察官は、被告を逮捕したとき、「見た目だけで」喫煙者だと判断し、逮捕したわけです。だから、弁護士としては、そういった判断が妥当だと陪審員候補が感じているかどうかを、このまわりくどい質問で聞こうとしていたわけです。

さらに、陪審員席の前列に座っていた男性にこう質問をしてきました。

「Mr. Smith(仮名)、それではあなたに質問します。あなたは、今手をあげませんでしたが、口臭によって、その人が喫煙者だと判断できるとお考えですか」

「ああ、喫煙者かどうかは、においでわかると思うよ」

「それでは、そのような人は、どのような匂いがしますか?」

「うーん、そうだなぁ、なんとも形容はできないけど、草を焼いた匂いだね(笑)」

「そうですか、わかりました。ありがとうございます」

質問はさらに続きます。



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