24時間週7日営業、のことではありません。

FOXのドラマ"24"のシーズン7がついにはじまったのです。
昨年いろいろあって、放映が延期されたので、ジャック・バウアーが帰ってくるのは実に1年半ぶりになります。

24は、他の政治ドラマと同じように、その時代の政治背景をプロットにうまく取り入れることでも知られています。

昨年オバマ大統領がアフリカ系として初めて大統領に当選しました。その裏では、24の初期シーズンでDavid Palmer(Dennis Haysbert)が大統領になり、その賢人ぶりが、多くのアメリカ人に「誠実なアフリカ系大統領」のイメージを植えつけ、「アフリカ系大統領の受け入れ体制を作った」いう説もあります。

実際には、視聴率からするとそこまでの影響はなかったんじゃないかと思いますが、人気ドラマでアフリカ系大統領が実現したということは、現実でも国民の準備が整っていたということなのでしょう。

今回のシーズン7が捉えている時事ネタは、「拷問」。

シーズン7が始まった頃、ちょうど前政権のCheney副大統領が、「テロ犯に対する拷問」を認めるような発言をしたことで、物議をかもしていました。具体的には、テロ対策の一環として、必要とされる情報を得るために、収監されているテロ犯に対して、「水責め」を行ったというのです。

新しい司法長官であるEric Holder氏(ちなみにこちらもアフリカ系初)は、上院の公聴会で「水責めは国際法上、れっきとした犯罪である」と言いました。「日本でも(戦時中)水責めを行ったものは、戦犯として処されている」と。

上院の一人がこれに対し、「でも、本当にアメリカ国民が一刻を争う危険に瀕していて、拷問が唯一必要な情報を聞き出す手段だとしたら、水責めをするしかないのではないか?」(この質問自体、24を意識しているのは明らか)と聞くと、Holder氏「水責めだけが、必要情報をとりだす唯一の方法である、という前提条件を私は受け容れることができない」と実に賢い切り替えしをしました。

この公聴会の前後で、メディアでは「拷問は犯罪か?」「拷問は有効な手段か?」ということをよく取り上げていたのですが、総じて「拷問は犯罪」「拷問は、必要な情報を聞き出すために、有効どころか、効率が悪く、間違った情報を得る可能性が高くなる」「拷問よりも、正確な情報を短時間で犯罪者から得る方法はたくさんある」という結論を各専門家が出しています。

そして、オバマ大統領が就任第一日目に行ったことが、グアンタナモ・ベイの閉鎖を宣言する大統領令。高い支持率を持つオバマ大統領が、拷問の横行するこの収容所の閉鎖を宣言したことで、世論は完全に「拷問反対」の風潮となっています。

これは、24というドラマにとって、かなり不利な展開です。24は、拷問なしには考えられないドラマだからです。ジャック・バウアーが拷問できなかったら、いや、もし拷問をしても、視聴者に拷問を認める考え方が失われていたら、ジャックに対する共感も薄れるというものです。

24のシーズン7は、このジレンマを真っ向からとりあげるようです。「拷問の是非」がドラマ開始から、大きなネタとしてとりあげられています。シーズン7の制作時期は1年以上も前だと思いますが、プロデューサー側もこの問題が、前政権のトップを巻き込んだ議論になるとは考えていなかったのではないでしょうか。ドラマにとっては世論が不利に傾きつつも、このこと自体をネタとして取り上げているので、もしまだ撮影しているのであれば、逆に挽回のチャンスがありそうです。

具体的にストーリーがどのように展開していくかに関しては、ファンの方のために、もちろん黙っておくことにします。