電光ボードを眺めていると、"curious case"という文字が目に入りました。

最近、映画を全くチェックしておらず、何が面白いのか見当もつけずに映画館に来てしまいました。で、飛び込んできた文字が、"curious case"。
聞いたことのない映画の名前が並んでいる中で、この名前だけが、唯一記憶に引っかかっていたのです。

早速、iPhoneでこの映画を調べてみると、正式名称は"The curious case of Benjamin Button"。邦題は、「ベンジャミン・バトン - 数奇な人生」。電光掲示板は、文字数の制限があるから、"curious case"と出ていたんでしょう。

ああ、例のブラッド・ピットの映画か。
「段々、若返っていく男の数奇な人生を描く」というヤツ。

「段々若返る」という設定を思い出した時点で、興味レベルはほぼゼロ。なぜなら、そんな男の数奇な話は、ありえないからです。そういう、設定に無理があるものは、好きじゃないんです。

いや、でも評判は、すごく高かったな。ひょっとして面白いのかな。
そう思い、さらに情報を調べてみると、"David Fincher"の文字が・・・。

デビッド・フィンチャー - 私が好きな映画監督の1人です。
ピット=フィンチャーのコンビにより作られた「セブン」と「ファイト・クラブ」。DVDによる英語学習にハマっていた頃、この2作品を数え切れないほど見た覚えがあります。「セブン」のラストシーンの場面は、後で口からセリフが勝手に出てくるほど見ました(英語としてあまり役に立ちませんが)。「ファイト・クラブ」に至っては、卒論のテーマの一つとして分析をしたほどです(今考えるとあまりに恥ずかしい)。

私はアル・パチーノが好きなのですが、パチーノの映画なら、別に興味が沸かなくとも、とりあえず見ます。
それと同じように、フィンチャー作品は、たとえ面白くなさそうでも、見なくちゃいけない、という義務感が急に沸いてきたのです。そう、あのジョディ・フォスターの「パニック・ルーム」を見たときも、同じ気持ちでした…。

仕方ないので、チケットを買って見ることにしました。

(以下、ちょっとネタバレあり)

感想は・・・当初の予想をはるかに上回りました。
とても美しい話です。

年を経るごとに若返り、段々美しく、カッコよくなっていくベンジャミンを見るだけでも、ブラッド・ピットファンには垂涎モノなのではないでしょうか。

デイジー(ケイト・ブランシェット)という女性がヒロイン。普通に年をとっていくデイジーが子供の時は、ベンジャミンが老人。デイジーが老人の時は、ベンジャミンが子供。でも、その逆行する時間の中間地点で、お互いの年がピッタリ合う時期があるんですが、その限りある時間のはかなさが、美しい。

アカデミー賞にもたくさんノミネートされてますね…実は大本命…そんなことも知らなかった…。
フィンチャー監督、今回は賞をとって欲しいですね。