ロングアイランドに住んでいた頃、テレビのinformercialを見ていたんです。そうすると、エクササイズビデオの宣伝をやっています。家で筋力トレーニングをしたかった私は、ゴムバンドを使ったエクササイズに興味を持ち、その商品を購入しました。

しかし、ビジネスとしてDVDとゴムバンドを30ドルあまりで販売するだけで、そんなに利益になるのかなぁと、他人事ながら、心配をしていました。

商品が到着すると、使用の手引きみたいなものが書いてあります。

そして、そこには「効果を最大限にするために」という箇所があって、お医者さんが運動前と後に○○や××といった栄養素をとると良い、などと解説しています。

もちろん、ビデオを買ってやる気が満々ですから、「せっかくだから効果を最大化させたい」と思いますよね。

なので、その栄養素をとりたいと思うわけですが、おあつらえ向きにビタミン剤のカタログがきちんと入っています。そして、今なら1個セットが無料でついてくると…そこで、私はハッと気づきました。

これは、DVDの販売会社であると同時に、ビタミン剤の会社なんだと!

ビタミン剤や健康食品と言うのは、非常に利益率の高い商品です。

プロセスとしては、こうです。
DVDを買った人が、ビタミン剤を買います。DVDの販売は一回きりですが、ビタミン剤は消費財です。使ったらなくなるので、「月々○個プラン」等に申し込むことになります。そうすると、販売側には継続的に売上が入ってくることになります。

こういう商売の組み立て方は、とても上手だなぁと思います。

「実はビタミン剤の会社だった!」と言っても、別に消費者をだましているわけではありません。ビタミン剤は、買っても買わなくても良いのです。「健康の増進」というテーマをもとに、消費者に購買ステップを用意してあげて、機会を与えているだけなのです。消費者は、自分の興味レベルに応じて立ち止まったり、前に進んだりすることができます。売り込みがなく、消費者は自分のほしいものを手にすることができます。売る側は、売り込みをする必要なく、自然な流れで様々な商品を提案し、売上をあげることができます。

「ビジネスモデル」はアートだと思います。
人にひたすら迷惑をかけ続けながら売り込みを行い、少ない成約率でも、営業マンに檄をとばしながら売上を上げる、そんな商売もありです。でも、美しくないんです。

売る側もハッピー、買う側もハッピー、総じて社会もハッピー、そういったビジネスモデルを見るのは非常にうれしいです。個人金融の世界は、売り込みが非常に多い世界です。お客様がご自分の選択で、必要なものを買っていく、自分のビジネスに関しても、そういった設計が実現できるように努力しています。