The Island


マイケル・ベイ監督作品です。
この監督の作る映画(過去作品は"ザ・ロック""アルマゲドン""パール・ハーバー"など)は、常に「ハリウッド映画の中のハリウッド映画」という感じです。わかりやすいプロットと、興奮を途切れさせないカット、ど派手なアクション、美男・美女の人気俳優の起用という、ハリウッド映画成功の方程式のようなものを作り上げています。

この映画自体は、クローン人間が題材となっていますが、「クローン技術の是非」についての示唆が得られるようなことは全くありません。
また、人物描写にも深みがありません。出てくるキャラクターは、いいヤツか、わるいヤツかのどっちかです。

単純に、アクションを楽しむ、というのが正統な楽しみ方です。

あと、「そこはいくらなんでも捕まっちゃうだろう」とか、「あれ、何でそこで都合よくそうなっちゃうの?」など、細かく見ていると突っ込みどころは満載なのですが、そこは考えるだけムダで、娯楽だと思って細かいところは見逃すのが、彼の作品の楽しみ方です。

ビジネス的に見ると、アートとしての高みよりも、「映画の商業的な成績を追求するとどんな映画ができあがるか」、という意味で非常に勉強になるところがあります。

プロットとしての特徴は、バイオレンス、ラブロマンス、自由への渇望、善と悪の戦い(そして善が必ず勝つ)といったハリウッド映画のヒット要素が適度に織り込まれていることです。
観客の「こうなってほしい」という要望に全て応えてくれますが、逆に先が見えてしまうと、派手なアクションも退屈になってしまうのが難点です。

監督の遊び心なのか、過去の名作映画のモチーフをそのまま利用したのではないかと思われるシーンがあります。
かなり確信犯的に用いているのではないかと思います。

時計じかけのオレンジ - 目をこじあけての洗脳シーン
マトリックス - 人が液体セルに閉じ込められて培養されているシーン
カッコーの巣の上で - 途中で一瞬流れるBGMと皆が着ている白い服
マイノリティ・レポート - 机上でのウィンドウ操作シーン
iRobot - スーパーカーでのカーチェイス

こうした仕掛けによって、ヒット作品を狂いなく生み出すのは、ビジネスマンとしては見事としか言いようがありません。
私は、最初から最後まで純粋に楽しめました!


この映画では、いわゆる"Product Placement"が多数使われています。
要するに、映画の中に、スポンサーの商品を映画のコンテクストの中に配置して、広告効果を狙うものです。私が発見しただけでも、以下のようなものがあります。

Microsoft - XBox360のバーチャルゲーム機で男女の2人が対戦
Microsoft - MSN Searchと書かれた電話BOXで2人が電話
GM (Cadillac) - 男が運転することになるスーパーカー
GM (Hummer) - 高速道路で吹っ飛ぶ車
Calvin Klein - 女がモデルをしているブランド
Ben & Jerry - 女が売るアイス

現在、いろいろな映画やドラマで、こうしたProduct Placementを見ることができます。

マイケル・ベイ監督、次回作にも期待ですね。