個人金融をビジネスとしていて、難しいと感じるのは、商品が個人にとって圧倒的に難しく、全てを完璧に説明することができない点です。

複雑な保険商品などは、いろいろなフィーやメリットが複雑に絡み合っていて、説明しづらいし、お客様が全ての商品を理解し比較した上で購入することなどできません。

だからこそ「お客さんには複雑過ぎるから、簡潔に説明しろ」とはよく言われるのでしょうが、それをやってしまうと、「よく理解しないのに買ってしまった」ということになってしまいます。

事実、お客様がすでに持っている商品を見て、「これは、当初どういう理由で買われたのですか」と質問すると、「わからない。営業マンに良いと言われたので買った」と言う人も多く、それほど商品自体の価値には関心をもっていないことも多いのが事実です。一つの金融商品がもたらす、一人一人の家計に対するインパクトを考えると、これは由々しき事態です。無神経なアドバイスで資産を失う人は、世の中に無数にいるのです。

よく「保険は人間性で買ってもらう」とか「義理で買わせる」と言う人がいます。そう言えるくらいの営業マンになることは素晴らしいと思いますし、自分自身も、少なくともお客様に信頼されるに足る人間になりたいと思っています。

しかし、そのことと、明確な価値を提供する、ということとは別問題です。仮にも人様のお金を預かっておきながら、こちらから明確なメリットや、ベストの商品を提示しないとすれば、詐欺行為に等しいと思います。

この流れは、もちろん変わりつつあると思います。より多くの独立したアドバイザーが増え、アドバイスの価値自体にお金が払われる形が増えていけばと思います。

後は、いかにお客様に賢くなっていただけるか、どうやって啓蒙していくか、こういうことが本当に重要だなぁと感じています。