意気揚々と向かったGreat Neck。アレックスは、昼休みで、事務所から出てきました。

小柄で、気難しそうな人でしたが、話してみると、やさしい印象がありました。
私の車を一周して事務的に点検し、大きな傷がないことを確認。

次に、試乗です。

エンジンをかけて、近くの道を回ります。彼は、母親のために、安全な車を買いたいらしいのです。
その車にはたまたまABSが付いていたこと、運転しやすい車であったため、「これだ」と思ったらしいのです。会話をしてみると、お互い信頼感が沸くものです。彼は、私に興味を持って、いろいろ質問をしてきました。

「この車は良さそうだから、最初の値段どおりに、買わせてもらうことにするよ」

彼は、試乗をしたまま銀行に行き、$11,500のBank Checkを作成してくれました。

Bank Checkというのは、銀行が承認する小切手のことです。普通は、自分の持っている空白のチェックに、自分で金額を書き込みます。これに対して、Bank Checkは、銀行がその口座の残金を調べた上で金額と受け取り手を書き込み、作成します。もらう側としては、不渡りがない確実な小切手なので、こうした大きい取引の時にはよく使われます。

私は、落ち着きながらも内心狂喜していました。
買ったときよりも高く売れた!と。

最後に、アレックスは、私に言いました。

「近くに、知り合いの修理工場があるんだが、最後に、一応彼にチェックだけしてもらおうか。大丈夫だと思うけどね。すぐ終わると思うよ」

私には、後ろめたいものはありません。相対取引であるわけですから、修理工で車をチェックすること自体は、手続きとしては当然だと思っていましたので、"OK"といいました。

こうして、修理工場に車を持っていき、アレックスのなじみの修理工が車をリフトします。
私は修理工場の入り口で、ジュースを飲みながらルーティンワークが終わるのを待っています。

しかし、5分立っても終わらない。
10分立っても終わらない。

どうしたんだろうと思って彼らを見てみると、修理工が私の方をチラチラ見ながら、アレックスに何か説明をしています。何をやっているんだろう、と思ったところ、修理工は、車のあちこちを指差しはじめました。

修理工の、私に対する目からは、「軽蔑」が感じられました。