たとえば、次の記事、

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女性税理士中心に実行 ライブドアの粉飾決算

 ライブドアグループの証券取引法違反事件で、買収企業との取引を装ったとされるライブドア本体の2004年9月期の粉飾決算は、前取締役宮内亮治容疑者(38)=同法違反容疑で逮捕=が買収企業側に具体的な手口を示し、社内税理士の女性執行役員らが中心となって経理操作を実行していたことが30日、関係者の話で分かった。

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これは1月30日共同通信の記事です。
事実を淡々と伝えている、ただの新聞記事に見えますよね。

確かに、誰が、どこで、何を、どうした、ということを、比較的単調な表現で伝えているように見えます。

しかし、こんなに信憑性の高そうな文章でも、不明な点があるんですよね。

1. 不必要な単語

まずは、「女性税理士」の部分。税理士が女性だったから「女性」なのでしょうが、ここでジェンダーを明らかにする意味がよくわかりません。

この記事が伝えたかったことは、宮内氏が具体的な手口を示し、その税理士兼執行役員が中心となって経理操作をしていた、と言うことだろうと思うのですが、なぜこの税理士が女性であることがこのニュースにとって重要なのかが極めて不明です。

「女性」という単語がニュースに含まれている(しかも、その単語がヘッドラインで使われている)からには、それが伝えられる、なんらかの意味があるはずですよね。でも、この犯罪を犯したのが女性であるか男性であるかは、事件の重要性にとってどうでもいいことだと思うのですが、いかがでしょう。

「女性」という言葉が使われた理由は、一つ考えられます。あくまで、仮説です。

それは、社会的に高い地位にいる女性への嫉妬心を煽るのに、非常に効果的だということです。
私も見てきましたが、日本の企業社会では、まだまだ女性が高い地位にのぼりつめるのは難しいわけです。
その中で、執行役員になった女性がいる。
しかし、その女性が悪いことをした。

女性を未だに見下している男はまだたくさんいるでしょうから、「違反した役員は女性だった」と言えば、多くの読者はスカッとするかもしれません。低俗な満足感を満たすための、扇情的な記事である可能性があります。

本当に下世話な話だとは思いますが、私にはこれくらいの理由しか思い浮かばないのです。

2. 関係者の話

あと、もう一つ不明な点。「関係者の話で分かった」というもの。

あまりにも良く使われているので見過ごしがちですが、「関係者って誰?」といつも思います。

社員?元社員?同じビルで働いている違う会社の人?役員の友達?元同僚?元同級生?警察?社員の友達?

一つの会社には、いろんな「関係者」がいます。しかし、つながりや関係度合いによって、どれだけよくその会社のことを知っているかと言うことは、バラバラなのです。
だから、「関係者が言った」といわれても、100%信用できるかは、極めて疑わしい。その税理士さんに悪意を抱いている人が言ったのかもしれないし、記者がこの記事を捏造したとしても、我々には結局わからない。


3. 書き手の情報

そして、この記事には、書いた人の名前が載っていません。書いた人が何歳で、どんな地位にいて、どんな人生を送って、どのくらいの経験があって、どういう思想をもっていて、どんな状況でこの記事を書いたかがわからなければ、この記事にどのくらいの信憑性があるかは、本来分からないと思うのです。


この記事に唯一信頼性を与えているのは、「共同通信」という言葉です。
共同通信だから、ウソは書かないだろう、とふつうは思いますよね。

でも、結局そんなことは我々が事件現場にいて、見たわけではないのだから、絶対にわからないのです。

どんな記事であっても、生身の人間が言葉にしてしまった以上、恣意性や解釈が入るのは避けられません。

でも、それは仕方ないし、マスコミはそれを続けていくしかないと思います。しかし、情報の受け手の我々としては、それは当然のこととして、マスコミに対する姿勢を改めなくてははならないと思うんです。

我々にとって必要なのは、とにかくあらゆる角度から情報を集めて、その情報の海の中から、「事実はこうなんじゃないか」「この記事は80%くらいはほんとうなんじゃないか」と推測し、あくまで断定することなく、自分なりの結論を下すことだけだと思うんです。
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