(以下の私の陪審員体験談は、一般的にリリースしてよいと思われる情報のみを個人的判断で公開しています。また、小さい案件ではあるものの、被告や裁判が絶対に特定されないよう、事件に関する情報は、全く特定不可能なレベルまでに脚色しています)

12人の陪審員席に座ったとき、1枚の紙切れを渡されました。

その紙には、15問ほどの質問が載っていました。
質問は、以下のようなものでした(一部、記憶が曖昧のため、不明)

- フルネーム
- 現在の住まいはどこか
- 出身はどこか
- 最終学歴
- 最終学歴での、専攻は何だったか?
- 家族構成
- 子供がいる場合、子供の職業は何か
- 過去、犯罪で有罪を宣告されたことがあるか
- 過去に、陪審員を行ったことがあるか
- その際に、判決に関わったか
- 身内で、過去に犯罪に巻き込まれたことのある人はいるか
- 身内で、有罪判決を受けたことがある人はいるか
- 上記の事実が、陪審員としての決定に影響を与えると思うか
- 余暇は、何をして過ごしているか

陪審員席には、結局クジで選ばれた12人が座りましたが、傍聴席にも、まだ10数人の陪審員候補者が残っています。
どうやら、この後、"Jury Selection"(陪審員の選定)に入るようで、席に座った12人が第1候補、傍聴席に残った残りの人たちが第2候補のようです。

陪審員は、被告の有罪・無罪を決める、重要な役割を担っています。
冗談ではなく、人の一生を左右しかねない非常に大事な任務なわけです。適当に、判事が陪審員を選んだり、被告・原告どちらかに明らかに有利な陪審員を選ぶわけにはいきません。

したがって、何十人といる陪審員候補者の中から、原告・被告両側の弁護士が認めた陪審員のみが、実際の法廷で判決を下す役割を担うことになるのです。
この場面は、映画でも良く出てくるので、「あー、やっぱりこういう風にやるんだー」と思いながら、見ていました。

今回のケースは、

- 男が、ある軽犯罪で、警察に捕まった
- だが、警察はその軽犯罪を完全に確認する前に逮捕した
- そのため、被告が本当にその軽犯罪を犯したのか、具体的根拠がわからない

ということで、警察が、この被告を逮捕したことが、果たして妥当だったのか、被告は有罪なのか、ということを審理するものです。

ここで、警察官全般に対し、うらみを持っている陪審員がいたりすれば、被告には有利になりますが、原告(検察側)には不利になってしまいます。原告側は、そういう陪審員は排除したい。

逆に、たとえば過去に同様の軽犯罪で被害に遭った経験をもっている人が陪審員にいたら、いかなる理由であっても、そういう被告を許さないかもしれません。これは、逆に原告に有利になり、被告側としては、そういう陪審員は排除したいと思うでしょう。

それぞれの弁護士は、陪審員候補にいくつかの質問を投げ、その反応を見ながら、一人一人の陪審員候補が自分側に有利か・不利かを見極めていくのです。どちか一方が自分にとって不利と判断すれば、その陪審員候補は、選ばれません。

陪審員選定の第一ステップは、陪審員候補の自己紹介です。
先ほど渡された紙を持ち、一人一人立って、質問を読み上げ、答えていきました。

私の隣の人は、自己紹介の途中で、以下のように言いました。

「正直言って、私はこの件に関しては、客観的な判断ができる立場にはいません。したがって、この件には関わるべきじゃないと思ってます。」

彼女の過去に何が起こったのかは、わかりませんが、この軽犯罪に関しては、個人的に何かつらい体験があったようです。判事は彼女の主張を聞き入れ、「わかりました。それでは、弁護士が同意すれば、あなたを候補からはずしましょう」というようなことを言いました。

判事の手際が良いため、テンポ良く自己紹介が進みます。中には、緊張のあまり"I'm very nervous, I'm sorry"と繰り返す女性の方もいます。緊張するのは、人前で話すということもあるでしょうが、これから、ある一人の人間の一生を左右しかねない決定をしなければならないのですから、ある意味同意してしまいます。私も少し、そういった感情を持ちました。

一通り、各陪審員候補の自己紹介が終わると、今度は原告・被告側両弁護士が、いろんな質問を、陪審員候補に向かってはじめました。

ここからは、まるでドラマか映画を見ているようでした。

不謹慎ながら、弁護士の語り口を楽しみつつ、なぜあれだけ法廷ドラマ・映画がアメリカ人に絶大な人気を誇るのか、ここで垣間見た気がするのです。