Midtown Report

ビジネスと人間に関する発見と考察 from Los Angeles & New York

October 2010

鳥肌が立った出来事。



まさか、こんな光景を見る日が来るとは…感慨深いです。

上記の動画で、ホストを務めている男の名前は、ジェンク・ユーガー(Cenk Uygur)。
この番組"COUNTDOWN"の正式なホストではありません。
本当のホストであるキース・オーバーマン(Keith Olbermann)がお休みをとったため、ジェンクが代わりに臨時ホストとして入ったわけです。

この「ジェンクという男が、このCOUNTDOWNという番組でホストをしている」ということは、アメリカのメディア革命を象徴する大きな出来事なのです。
ちょっと解説したいと思います。


アメリカのテレビニュースチャンネルを見ると、報道の仕方が保守かリベラルかに偏っていることがわかります。もちろん、ニュースチャンネル自身は、思想にバイアスがかかっていることを否定しますが、見ていればわりと明らかです。

保守メディアの代表といえば、何と言ってもFOX NEWSです。保守派ですから、共和党の支持者が好むような思想(政府は小さく税金は低く、自由貿易、銃OK、同性婚ダメ、中絶ダメ、国民皆保険ありえない、レーガンがヒーロー 等々)を持ったホストをそろえ、ニュース番組を提供しています。

そのFOX NEWSの中でもボス的存在なのが、ビル・オーライリー(Bill O'Reilly)。



この動画のように、ゲストと喧嘩になることがしょっちゅうです。彼には熱狂的な支持者と、対極には多数のアンチが同時に存在しています。彼の"The O'Reilly Factor"というニュース番組は、ケーブルテレビのニュース番組の中で最も視聴率が高い番組ですが、好きな人も嫌いな人もみんな見るのでしょう。

ビル・オーライリー率いるFOXに対抗するのが、リベラルメディアの代表であるMSNBCです。CNNや、CBSもリベラル寄りですが、MSNBCは、ハッキリとリベラル色を打ち出していて、一部では「プログレッシブ」(急進的)という形容詞が使われることもあります。

2年前の大統領選挙では、MSNBCは大きな役割を果たしました。リベラルのMSNBCは、民主党支持者の好む思想(弱者に優しく、政府は市場を管理、規制貿易、銃ダメ、同姓婚OK、中絶OK、国民皆保険推進、オバマ、クリントンがヒーロー)を背景に、連日共和党およびブッシュ大統領を攻撃し続けたのです。

そして、MSNBCの急先鋒、キース・オーバーマンのニュース番組が "COUNTDOWN"。
ビル・オーライリーに負けないくらい濃いキャラクターで、共和党に関連する全てのことを否定し続けます(笑)。



ビル・オーライリー、ラッシュ・リンボー(この人はラジオホストですが、オーライリーよりもさらに過激)といった保守陣営をボコボコにしています。

ここまで来ると、完全にショーですから、安心して「懐疑的に」番組を見ることができます。バイアスのかかっていることが視聴者にわかっているから、テレビ局を変に疑う必要もなく、逆に安心なのです。アメリカのニュース番組を見ていて気持ち良いのは、こういう風にテレビ画面に出てくる人が、ポジションをハッキリと取り、それを表現することです。

もう一人MSNBCの強力なアンカー、レイチェル・マドウ。



彼女は、主要テレビ局・プライムタイムのニュース番組のホストとして、ゲイでありながら抜擢された初めての女性です。「存在自体がリベラル」で、保守派にとっては脅威なのです。


さて、ジェンクの話に戻ります。
ジェンクは、もともと、テレビ界の人間ではありません。

トルコ系アメリカ人としてNJで育ち、ウォートンMBA、コロンビア・ロースクールを卒業したエリートです。法律事務所勤務と同時に、ラジオ放送を副業でこなし、2002年に、インターネットでニュースとエンターテイメント情報を配信するザ・ヤング・タークス(The Young Turks)というニュース番組を立ち上げました。

ジェンクは、インターネットで、ニュース番組をゼロから作ったのです。
テレビのセットには到底かなわない、貧相なスタジオですが、ジェンクは持ち前の弁舌を生かして、YouTube上での視聴者をドンドン増やしていきます。収益は広告と寄付によって成り立っています。私も、ヤングタークスが結構好きだったので、3年前から会員になり、毎月10ドルですが寄付をさせてもらってます。
ジェンクの口癖は、"Let's keep it real"。建て前を排除し、全ての物事を本音で切り、誰に遠慮することもありません。


2008年、ヤングタークスはすでにネット上では一大メディアとなっていました。大統領選において、MSNBCなどの主要リベラルメディアの「援護射撃」とも呼べるニュースクリップを次々と展開します。
ヤングタークス自体は、2時間ほどのニュース番組なのですが、彼らはそれをいくつかの細かいニュースクリップ単位に動画を分け、それを次々とYouTubeにアップしたのです。共和党副大統領候補ペイリンを攻撃しているのが次のクリップ。こんな感じのクリップが、YouTubeからは山のように出てきます。



ジェンク率いるヤングタークスの影響力は、日に日に大きくなり、テレビ局も無視できないほどになりました。昨年から、テレビ局のニュース番組に、ジェンクがコメンテーターとしてゲスト出演する回数がだんだん多くなっていったようです。

そして、今年の7月(6月だったかな)、The Dylan Ratigan ShowというMSNBCのテレビ番組で、ジェンクが臨時ホストをつとめました。ネット出身のアンカーが大手テレビ局のニュース番組ホストを任されるという、歴史的瞬間です。

アメリカの番組ホストはよく休みをとります。そうすると、代わりのアンカーが臨時ホストとして入るわけですが、当然経験や人気が乏しいアンカーが入るので、視聴率は落ちるのが普通です。ところが、臨時ホストとしてジェンクが入ると、視聴率が大幅に伸びるのです。ネットでの支持者が、「ジェンクが出るんなら、見よう」と思うのでしょう。こうなったら、テレビ局としてはもう無視することはできません。

こうしてジェンクは、MSNBCの看板番組であるCOUNTDOWNのホストをつとめるまでになりました。昔からジェンクを支持していた自分としては、鳥肌が立つほど感動的な出来事です。
ネットで視聴者ゼロからスタートし、頭脳と弁舌で視聴者を増やし、ついにCOUNTDOWNの臨時ホストにまでのぼりつめたジェンク。MSNBCが、ジェンクの新ニュース番組を作るのは時間の問題といわれています。



ジェンクがテレビ界に行ってしまうのは、ネットのファンとしてはさびしいところです。でも、遅かれ早かれ、ジェンクはテレビの仕事をやめ、ヤングタークスに完全に戻ってくる日が来るのでしょう。その時こそ、テレビの時代は終わり、本当のメディア革命が起きたと言えるのかもしれません。

2泊3日でNew Yorkに行ってきました。
企業年金のサービスをご利用いただいている会社を訪問するのが主目的だったのですが、それ以外は久しぶりに友人らと会いました。

水曜の夜は、起業家の会である、一旗会NYに参加しました。
昨年の12月以来の参加です。もともと、自分が3年前まで幹事をやっていた会ですが、こうして引き継がれて毎月行われているのを見ると、何だかホッとします。自分の居場所に帰ってきたような気にさせられます。

この日のテーマは、任意の参加者が、自分のビジネスプランを披露し、他の参加者にフィードバックを求める、というもの。他の人に自分のアイデアをたたかれるのは、決して快いものではありません。しかし、あえてそのリスクを背負って発言した3人の参加者の方には、頭が下がる思いです。昨日の皆さんのコメントを、それぞれのビジネスに役立てて欲しいです。

こうしてたまに一旗会NYに参加すると、5年前からの友人にも会えるし、元気一杯の生き生きとした若者にも会えるし、通常の活動では会うことができなかったような、影響力の大きい方々にも簡単に会うことができます。現幹事のEさん、ずっと昔から私のパートナーとして司会をされてきたTさんに、感謝です。これからも、いい会を育てていってください。

New Yorkに行くと、必ずEさんのアパートに泊めさせていただいているのですが、夜、アパートに帰ってくると、必ずといっていいほど、ファイナンス、起業、ビジネス本、自己啓発に関する「語り」が2人ではじまります。昨夜は、壁に貼ってあるフリップチャート用紙に、ダイレクトマーケティングのモデルを延々と書き出し、話していたら、いつの間にか3時AMになっていました。私にとっては、CA時間の0時なので耐えられるのですが、Eさんはなぜあそこまで不死身なのか全く理解できません。

Eさんのアパートには、いつも私好きの本がたくさん置いてあるので、またいろいろと勝手に読ませていただきました。
堀江さんの本は、特に良かったです。何の資産も持っていなくとも、自分のバランスシートの、無形固定資産を見つけて、利用せよ!という考え方は、とても共感できます。

おみやげとして、「紳竜の研究」DVDを置いていきました。島田紳助氏がどのような戦略をもって、漫才の世界に入っていったか、そして撤退していったか、本人が講義形式で解説している貴重な資料です。最高に面白いです。

あと、最後に宣伝です。NY在住の方、Eさんおよび泉正人氏主催の「お金の教養講座」こちら、ぜひご参加ください。

https://us.financial.ac/seminar/101023event.html


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