"Food, Inc."は、アメリカのドキュメンタリー。とても面白い映画です。
我々の食物の大部分は、片手で数えられるくらいの少数の企業が生産を独占し、工場のように生産している、というショッキングな事実を暴くという内容です。近代の食物生産が、どのようなリスクをはらんでいるか、考えさせられる内容です。
この映画は、よく"The Cove"と比較されます。ちょうど、昨年度のアカデミー賞ドキュメンタリー部門で、両作品が同時にノミネートされたのです。"The Cove"と"Food, Inc"は、この年の同部門で一騎打ちの対決と言われていました。結果的には、"The Cove"が勝ち、アカデミー賞を手にしました。世間の注目を浴びることになったのは、異国のイルカ漁の話だったのす。
しかし、アメリカ人の生活により影響を与えているのは、Food, Inc.で扱っている「日常の食べ物」の話です。議論の重要度でいえば、比較になりません。
"The Cove"に対する批判として主なものに、「アメリカ人は牛や豚を殺して食べているじゃないか!」という意見があります。この映画では、まさにそれらの家畜がどのように殺されているかが明らかにされています。
豚が屠殺されるシーンなどは、あっけないです。泣いている豚がベルトコンベアにどんどん乗せられ、ブラックボックスのような大きい装置に入れられ、逆サイドから出てきた段階ではすでにグッタリしています。工場で運ばれる素材でしかないという印象です。
"The Cove"は、"Food, Inc."に比べて、衝撃度が圧倒的に高いのでしょう。スパイ映画的な要素があるし、かわいい動物がモリで刺されて入り江が血に染まるわけですから。
一方、"Food, Inc."で動物が殺される様子は、あっけなさ過ぎて、感情移入すらできません。動物は、殺されるというよりも、「処理」されています。そこには"The Cove"で喚起させられるような痛みがありません。
イルカの殺戮シーンは胸が痛むけど、豚や牛の殺戮シーンは見ても痛みを感じない、というのはよくよく考えると変です。このドラマ性の欠如のために、"Food, Inc."は"The Cove"に負けたのでしょうか。
ひょっとすると、見ている自分達が、肉の消費者=食品会社の「共犯者」なので、現在のシステムが間違っている可能性を100%認めることができない、ということなのかもしれません。
思えば私も共犯者です。いつもスーパーで肉を買っていると、こういう製造システムがあるからこそ、安くて品質が一定の食材を年中買えるんだということがよくわかります。この映画が批判する内容に、100%賛成できていない自分に気づかされるわけです。
我々の食物の大部分は、片手で数えられるくらいの少数の企業が生産を独占し、工場のように生産している、というショッキングな事実を暴くという内容です。近代の食物生産が、どのようなリスクをはらんでいるか、考えさせられる内容です。
この映画は、よく"The Cove"と比較されます。ちょうど、昨年度のアカデミー賞ドキュメンタリー部門で、両作品が同時にノミネートされたのです。"The Cove"と"Food, Inc"は、この年の同部門で一騎打ちの対決と言われていました。結果的には、"The Cove"が勝ち、アカデミー賞を手にしました。世間の注目を浴びることになったのは、異国のイルカ漁の話だったのす。
しかし、アメリカ人の生活により影響を与えているのは、Food, Inc.で扱っている「日常の食べ物」の話です。議論の重要度でいえば、比較になりません。
"The Cove"に対する批判として主なものに、「アメリカ人は牛や豚を殺して食べているじゃないか!」という意見があります。この映画では、まさにそれらの家畜がどのように殺されているかが明らかにされています。
豚が屠殺されるシーンなどは、あっけないです。泣いている豚がベルトコンベアにどんどん乗せられ、ブラックボックスのような大きい装置に入れられ、逆サイドから出てきた段階ではすでにグッタリしています。工場で運ばれる素材でしかないという印象です。
"The Cove"は、"Food, Inc."に比べて、衝撃度が圧倒的に高いのでしょう。スパイ映画的な要素があるし、かわいい動物がモリで刺されて入り江が血に染まるわけですから。
一方、"Food, Inc."で動物が殺される様子は、あっけなさ過ぎて、感情移入すらできません。動物は、殺されるというよりも、「処理」されています。そこには"The Cove"で喚起させられるような痛みがありません。
イルカの殺戮シーンは胸が痛むけど、豚や牛の殺戮シーンは見ても痛みを感じない、というのはよくよく考えると変です。このドラマ性の欠如のために、"Food, Inc."は"The Cove"に負けたのでしょうか。
ひょっとすると、見ている自分達が、肉の消費者=食品会社の「共犯者」なので、現在のシステムが間違っている可能性を100%認めることができない、ということなのかもしれません。
思えば私も共犯者です。いつもスーパーで肉を買っていると、こういう製造システムがあるからこそ、安くて品質が一定の食材を年中買えるんだということがよくわかります。この映画が批判する内容に、100%賛成できていない自分に気づかされるわけです。