Midtown Report

ビジネスと人間に関する発見と考察 from Los Angeles & New York

前評判が高く、デビッド・フィンチャーが監督ということもあって、見逃せない作。現在世界一のSNSで、5億人が利用するFacebook誕生の裏を描いた"The Social Network"。1ヶ月ほど前、見に行ってきました。

キャッチコピーが、いいです。

"You Don’t Get To 500 Million Friends Without Making A Few Enemies"

「数人の敵でも作らないと、5億人の友達はできない」

これを見ると、Facebook創業者である、マーク・ザッカーバーグのイメージが悪くなる、という評判を聞いていました。しかし、私の場合には、それは全く逆でした。ここで描かれているマークは、理屈っぽいオタク。人付き合いはちょっと苦手ですが、人の欲求を見抜くセンスと、プログラミング技術は抜群に優れています。大成功をおさめた起業物語として、良い意味での刺激を受けた人も結構いるのではないかと思います。

私は、2007年からFacebookを使っていますが、いつも感心するのは、人々の社会的欲求(認められたい、ほめられたい、仲間内で評価されたい)を満たすためのしかけがふんだんに盛り込まれていることです。

もともと、初期のFacebookは「ハーバード大生限定」でした。自分達が特別であることを確認したい学生の気持ちを刺激したことは、初期のFacebookの成功の重要な要因だったようです。

この映画では、Facebookの原型となる、Facemashというウェブサービスが出てきます。これもマークが開発したのですが、同じ大学内の、女性の顔をランダムに2つ同時に出し、どちらが美人かを大学内の学生に投票させる、というものです。短い間でものすごい数のアクセスを集め、サーバーをダウンさせたいきさつが描かれています。

勝手に女性の写真を集めてアップし、美人投票をネット上でさせるなど、ほめられたことではありません。建前で言ったら、「けしからん」という話になります。しかし、本音を言ってしまえば、これほどみんなが興味を持ちそうなこともありません。男性の間では常に上るような話題ですし、女性は自分が何位にランキングされているか、とても気がかりになるはずです。

さすがに、このようなえげつないプログラムはすぐになくなったようですが、そういえば、2007年 - 2008年当時のFacebookでは、これとよく似たアプリが大流行していました。"Compare People"というアプリケーションです。(今でもアプリ自体はあるようですが、制作者が課金をしはじめたため、ブームは完全に沈静化しているようです)

このアプリは、「友達比較ゲーム」です。友達と友達を比較して、投票を行います。

"Compare People"というアプリをスタートさせると、自分の友人の中から、ランダムに2人選ばれて、その2人のプロフィール写真が表示されます。そこで「Aさんと、Bさん、どちらが服装のセンスがある?」などと聞かれます。自分がより賛同する方を選ぶと、次の質問が現れます。

「CさんとDさん、結婚するならどっち?」
「EさんとFさん、一緒に仕事するならどっち?」
「GさんとHさん、頭が良さそうなのは、どっち?」
「IさんとJさん、将来成功しそうなのは、どっち?」
「KさんとLさん、デートするならどっち?」

このような質問がどんどん出てきて、それに答えていくわけです。
友人は友人で、同じように"Compare People"を行っていますから、ある程度のデータがたまってくると、仲間内でのランキングが発表されるようになります。

自分にも結果が通知されるのですが、「Jimmyさんは、あなたのネットワークで、コンピュータに詳しそうな人ランキング○位です!」などと表示されます。
ここで、自分が上位になる分野があれば一人でニタニタし、下位に評価されたりすると思いっきり落ち込みます。

自分が仲間内でどんな位置づけなのかを知りたい、できれば、自分の地位を上げたい、と思うのは、どんな人でも持っている社会的欲求なのではないかと思います。

Facebookは創業の頃から、こういう「仲間からの承認」、違う表現をすると「優越感」や「劣等感」を刺激するようなしかけをたくさん作ってきています。自分の結婚式や子供の写真を載せて、お祝いの言葉をもらえたら、嬉しいものです。普段思っていることを書いて、他の人からコメントをもらったり、"Like"(いいね!)ボタンをクリックしてもらえれば嬉しい。有名人や、コミュニティで尊敬されている人と友達になったり、一緒に撮られた写真を公開するのも、ちょっとした優越感に浸れます。

こうして、Facebookは、人が持つ承認の欲求を満たしながら、加入者を爆発的に増やしていったわけです。

私は、Facebookの一参加者として、おおむね楽しんでいますが、一方これを冷ややかに見てしまうこともあります。Facebookでは、コミュニケーションが表層的になりがちなんです。

場としてのFacebookは、大学や社会人の「立食パーティ」に似ています。みんなが自分をオープンに出すので、実名・顔出しが、基本です。基本的に友人全員の顔と名前が全て見えるので、変なことを言われたり、されたりする心配がありません。逆に、自分の言動も全員に見られているため、ネガティブな面を出すことは慎まないと、自分の仲間内のイメージに傷がつきます。また、深い苦悩や重い気分は、書いても迷惑になるだけです。こういう場では、「本当に思っていること」はなかなかシェアしにくく、明るくハッピーな自分を演出することが多くなります。したがって、コミュニケーションは比較的表面的で、あたりさわりのないものが多いように思います。英単語で表現すると、"Sincere"だが、"Authentic"ではない、とでも言うのでしょうか。Facebookにどっぷり浸かっていると、この軽薄さに耐えられなくなってきたりもします。

Facebookが「立食パーティ」なら、日本のSNSであるmixiは、「仮面舞踏会」です。mixiでは実名を使っている人が極端に少ないですし、顔写真はほぼ皆無です。身元を自分から明かさなければ、他人からは、誰なのか、どんな人なのかが全くわかりません。しかし、その人と知り合いであれば、例え実名でなくとも、あだ名やプロフィールで、何となく自分の友人として認識することができます。

私は、Facebook利用当初、mixiに対する興味を急速に失っていきました。実名で責任とリスクを負わない情報発信はずるい、と考えていたからです。
また、Mixiは、誰が誰だかわからないため、なりすましやスパムが横行しやすい環境にあります。コミュニティのコメント欄もよく荒れます。そういうわけで、私は一時期はMixiからも遠ざかっていました。

しかし、最近ではmixiの良さがわかるようになりました。友人の日記などには、Facebookには見られないような、かなり深い内容が散見されます。心の奥底にある悩みや、公衆の面前では口にできなような大胆な考えをシェアする人もいます。

Facebookでは顔が見えるから心の奥底を隠し、mixiでは顔が見えないからこそ逆にさらけ出せる、そんなことが起こっているような気もします。

こうして考えてみると、Facebookもmixiも、ブログもTwitterも、それぞれの生かし方があるのだな、と感じます。リアルのコミュニケーションでも、電話、対面、サシでの食事、3人以上の飲み会、それぞれのパターンによって、コミュニケーションのダイナミクスと、それによって可能な会話の質が変わってきます。それと同じように、SNS上でのコミュニケーションも、それぞれの特徴をちゃんと生かして楽しむことができればいいのでは、と思うようになりました。Facebookで、自分が感じる軽さも、別に悪いわけではなくて、そういう場なんだ、と理解できれば、有意義なように思います。

まぁ、映画の感想から大幅に脱線しましたが、「ソーシャル・ネットワーク」おすすめです。ぜひ見て下さい。

鳥肌が立った出来事。



まさか、こんな光景を見る日が来るとは…感慨深いです。

上記の動画で、ホストを務めている男の名前は、ジェンク・ユーガー(Cenk Uygur)。
この番組"COUNTDOWN"の正式なホストではありません。
本当のホストであるキース・オーバーマン(Keith Olbermann)がお休みをとったため、ジェンクが代わりに臨時ホストとして入ったわけです。

この「ジェンクという男が、このCOUNTDOWNという番組でホストをしている」ということは、アメリカのメディア革命を象徴する大きな出来事なのです。
ちょっと解説したいと思います。


アメリカのテレビニュースチャンネルを見ると、報道の仕方が保守かリベラルかに偏っていることがわかります。もちろん、ニュースチャンネル自身は、思想にバイアスがかかっていることを否定しますが、見ていればわりと明らかです。

保守メディアの代表といえば、何と言ってもFOX NEWSです。保守派ですから、共和党の支持者が好むような思想(政府は小さく税金は低く、自由貿易、銃OK、同性婚ダメ、中絶ダメ、国民皆保険ありえない、レーガンがヒーロー 等々)を持ったホストをそろえ、ニュース番組を提供しています。

そのFOX NEWSの中でもボス的存在なのが、ビル・オーライリー(Bill O'Reilly)。



この動画のように、ゲストと喧嘩になることがしょっちゅうです。彼には熱狂的な支持者と、対極には多数のアンチが同時に存在しています。彼の"The O'Reilly Factor"というニュース番組は、ケーブルテレビのニュース番組の中で最も視聴率が高い番組ですが、好きな人も嫌いな人もみんな見るのでしょう。

ビル・オーライリー率いるFOXに対抗するのが、リベラルメディアの代表であるMSNBCです。CNNや、CBSもリベラル寄りですが、MSNBCは、ハッキリとリベラル色を打ち出していて、一部では「プログレッシブ」(急進的)という形容詞が使われることもあります。

2年前の大統領選挙では、MSNBCは大きな役割を果たしました。リベラルのMSNBCは、民主党支持者の好む思想(弱者に優しく、政府は市場を管理、規制貿易、銃ダメ、同姓婚OK、中絶OK、国民皆保険推進、オバマ、クリントンがヒーロー)を背景に、連日共和党およびブッシュ大統領を攻撃し続けたのです。

そして、MSNBCの急先鋒、キース・オーバーマンのニュース番組が "COUNTDOWN"。
ビル・オーライリーに負けないくらい濃いキャラクターで、共和党に関連する全てのことを否定し続けます(笑)。



ビル・オーライリー、ラッシュ・リンボー(この人はラジオホストですが、オーライリーよりもさらに過激)といった保守陣営をボコボコにしています。

ここまで来ると、完全にショーですから、安心して「懐疑的に」番組を見ることができます。バイアスのかかっていることが視聴者にわかっているから、テレビ局を変に疑う必要もなく、逆に安心なのです。アメリカのニュース番組を見ていて気持ち良いのは、こういう風にテレビ画面に出てくる人が、ポジションをハッキリと取り、それを表現することです。

もう一人MSNBCの強力なアンカー、レイチェル・マドウ。



彼女は、主要テレビ局・プライムタイムのニュース番組のホストとして、ゲイでありながら抜擢された初めての女性です。「存在自体がリベラル」で、保守派にとっては脅威なのです。


さて、ジェンクの話に戻ります。
ジェンクは、もともと、テレビ界の人間ではありません。

トルコ系アメリカ人としてNJで育ち、ウォートンMBA、コロンビア・ロースクールを卒業したエリートです。法律事務所勤務と同時に、ラジオ放送を副業でこなし、2002年に、インターネットでニュースとエンターテイメント情報を配信するザ・ヤング・タークス(The Young Turks)というニュース番組を立ち上げました。

ジェンクは、インターネットで、ニュース番組をゼロから作ったのです。
テレビのセットには到底かなわない、貧相なスタジオですが、ジェンクは持ち前の弁舌を生かして、YouTube上での視聴者をドンドン増やしていきます。収益は広告と寄付によって成り立っています。私も、ヤングタークスが結構好きだったので、3年前から会員になり、毎月10ドルですが寄付をさせてもらってます。
ジェンクの口癖は、"Let's keep it real"。建て前を排除し、全ての物事を本音で切り、誰に遠慮することもありません。


2008年、ヤングタークスはすでにネット上では一大メディアとなっていました。大統領選において、MSNBCなどの主要リベラルメディアの「援護射撃」とも呼べるニュースクリップを次々と展開します。
ヤングタークス自体は、2時間ほどのニュース番組なのですが、彼らはそれをいくつかの細かいニュースクリップ単位に動画を分け、それを次々とYouTubeにアップしたのです。共和党副大統領候補ペイリンを攻撃しているのが次のクリップ。こんな感じのクリップが、YouTubeからは山のように出てきます。



ジェンク率いるヤングタークスの影響力は、日に日に大きくなり、テレビ局も無視できないほどになりました。昨年から、テレビ局のニュース番組に、ジェンクがコメンテーターとしてゲスト出演する回数がだんだん多くなっていったようです。

そして、今年の7月(6月だったかな)、The Dylan Ratigan ShowというMSNBCのテレビ番組で、ジェンクが臨時ホストをつとめました。ネット出身のアンカーが大手テレビ局のニュース番組ホストを任されるという、歴史的瞬間です。

アメリカの番組ホストはよく休みをとります。そうすると、代わりのアンカーが臨時ホストとして入るわけですが、当然経験や人気が乏しいアンカーが入るので、視聴率は落ちるのが普通です。ところが、臨時ホストとしてジェンクが入ると、視聴率が大幅に伸びるのです。ネットでの支持者が、「ジェンクが出るんなら、見よう」と思うのでしょう。こうなったら、テレビ局としてはもう無視することはできません。

こうしてジェンクは、MSNBCの看板番組であるCOUNTDOWNのホストをつとめるまでになりました。昔からジェンクを支持していた自分としては、鳥肌が立つほど感動的な出来事です。
ネットで視聴者ゼロからスタートし、頭脳と弁舌で視聴者を増やし、ついにCOUNTDOWNの臨時ホストにまでのぼりつめたジェンク。MSNBCが、ジェンクの新ニュース番組を作るのは時間の問題といわれています。



ジェンクがテレビ界に行ってしまうのは、ネットのファンとしてはさびしいところです。でも、遅かれ早かれ、ジェンクはテレビの仕事をやめ、ヤングタークスに完全に戻ってくる日が来るのでしょう。その時こそ、テレビの時代は終わり、本当のメディア革命が起きたと言えるのかもしれません。

2泊3日でNew Yorkに行ってきました。
企業年金のサービスをご利用いただいている会社を訪問するのが主目的だったのですが、それ以外は久しぶりに友人らと会いました。

水曜の夜は、起業家の会である、一旗会NYに参加しました。
昨年の12月以来の参加です。もともと、自分が3年前まで幹事をやっていた会ですが、こうして引き継がれて毎月行われているのを見ると、何だかホッとします。自分の居場所に帰ってきたような気にさせられます。

この日のテーマは、任意の参加者が、自分のビジネスプランを披露し、他の参加者にフィードバックを求める、というもの。他の人に自分のアイデアをたたかれるのは、決して快いものではありません。しかし、あえてそのリスクを背負って発言した3人の参加者の方には、頭が下がる思いです。昨日の皆さんのコメントを、それぞれのビジネスに役立てて欲しいです。

こうしてたまに一旗会NYに参加すると、5年前からの友人にも会えるし、元気一杯の生き生きとした若者にも会えるし、通常の活動では会うことができなかったような、影響力の大きい方々にも簡単に会うことができます。現幹事のEさん、ずっと昔から私のパートナーとして司会をされてきたTさんに、感謝です。これからも、いい会を育てていってください。

New Yorkに行くと、必ずEさんのアパートに泊めさせていただいているのですが、夜、アパートに帰ってくると、必ずといっていいほど、ファイナンス、起業、ビジネス本、自己啓発に関する「語り」が2人ではじまります。昨夜は、壁に貼ってあるフリップチャート用紙に、ダイレクトマーケティングのモデルを延々と書き出し、話していたら、いつの間にか3時AMになっていました。私にとっては、CA時間の0時なので耐えられるのですが、Eさんはなぜあそこまで不死身なのか全く理解できません。

Eさんのアパートには、いつも私好きの本がたくさん置いてあるので、またいろいろと勝手に読ませていただきました。
堀江さんの本は、特に良かったです。何の資産も持っていなくとも、自分のバランスシートの、無形固定資産を見つけて、利用せよ!という考え方は、とても共感できます。

おみやげとして、「紳竜の研究」DVDを置いていきました。島田紳助氏がどのような戦略をもって、漫才の世界に入っていったか、そして撤退していったか、本人が講義形式で解説している貴重な資料です。最高に面白いです。

あと、最後に宣伝です。NY在住の方、Eさんおよび泉正人氏主催の「お金の教養講座」こちら、ぜひご参加ください。

https://us.financial.ac/seminar/101023event.html


夢をかなえる「打ち出の小槌」夢をかなえる「打ち出の小槌」
著者:堀江 貴文
青志社(2009-10)
おすすめ度:3.5
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中卒の組立工、NYの億万長者になる。中卒の組立工、NYの億万長者になる。
著者:大根田 勝美
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-01-09)
おすすめ度:4.5
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人格改造マニュアル人格改造マニュアル
著者:鶴見 済
太田出版(1996-11)
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あなたの悩みが世界を救う!―不条理な世の中を生き抜くための人生バイブルあなたの悩みが世界を救う!―不条理な世の中を生き抜くための人生バイブル
著者:神田 昌典
ダイヤモンド社(2006-12-15)
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紳竜の研究 [DVD]紳竜の研究 [DVD]
出演:島田紳助、松本竜介
アール・アンド・シー(2007-05-30)
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"Food, Inc."は、アメリカのドキュメンタリー。とても面白い映画です。
我々の食物の大部分は、片手で数えられるくらいの少数の企業が生産を独占し、工場のように生産している、というショッキングな事実を暴くという内容です。近代の食物生産が、どのようなリスクをはらんでいるか、考えさせられる内容です。



この映画は、よく"The Cove"と比較されます。ちょうど、昨年度のアカデミー賞ドキュメンタリー部門で、両作品が同時にノミネートされたのです。"The Cove"と"Food, Inc"は、この年の同部門で一騎打ちの対決と言われていました。結果的には、"The Cove"が勝ち、アカデミー賞を手にしました。世間の注目を浴びることになったのは、異国のイルカ漁の話だったのす。

しかし、アメリカ人の生活により影響を与えているのは、Food, Inc.で扱っている「日常の食べ物」の話です。議論の重要度でいえば、比較になりません。
"The Cove"に対する批判として主なものに、「アメリカ人は牛や豚を殺して食べているじゃないか!」という意見があります。この映画では、まさにそれらの家畜がどのように殺されているかが明らかにされています。

豚が屠殺されるシーンなどは、あっけないです。泣いている豚がベルトコンベアにどんどん乗せられ、ブラックボックスのような大きい装置に入れられ、逆サイドから出てきた段階ではすでにグッタリしています。工場で運ばれる素材でしかないという印象です。

"The Cove"は、"Food, Inc."に比べて、衝撃度が圧倒的に高いのでしょう。スパイ映画的な要素があるし、かわいい動物がモリで刺されて入り江が血に染まるわけですから。
一方、"Food, Inc."で動物が殺される様子は、あっけなさ過ぎて、感情移入すらできません。動物は、殺されるというよりも、「処理」されています。そこには"The Cove"で喚起させられるような痛みがありません。

イルカの殺戮シーンは胸が痛むけど、豚や牛の殺戮シーンは見ても痛みを感じない、というのはよくよく考えると変です。このドラマ性の欠如のために、"Food, Inc."は"The Cove"に負けたのでしょうか。

ひょっとすると、見ている自分達が、肉の消費者=食品会社の「共犯者」なので、現在のシステムが間違っている可能性を100%認めることができない、ということなのかもしれません。

思えば私も共犯者です。いつもスーパーで肉を買っていると、こういう製造システムがあるからこそ、安くて品質が一定の食材を年中買えるんだということがよくわかります。この映画が批判する内容に、100%賛成できていない自分に気づかされるわけです。

地元の本屋に行ってみると、本屋のランキングがあって、そこで3位になっている本を見て、驚きました。

残念な人の思考法(日経プレミアシリーズ)残念な人の思考法(日経プレミアシリーズ)
著者:山崎将志
日本経済新聞出版社(2010-04-09)
おすすめ度:3.0
販売元:Amazon.co.jp
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山崎将志さんの本です。タイトルが極めて秀逸なので、つい手にとってしまいたくなります。調べて見ると、すでに20万部売れているベストセラー。山崎さんは、私が昔働いていたコンサルティング会社での上司でした。自分の元上司の本が、LAの日系の本屋でランキング入りしていたので、大変ビックリしたわけです。

もともと2001年頃、Eラーニングに関する社内セミナーを開催されていたのを、私が聴講しに行き、興味を持ったので、後日お会いしに行ってからはいろいろお世話いただき、ほんの短期間でしたがプロジェクトでもご一緒しました。私は、その時社内でのグループ異動を希望していたのですが、山崎さんのおかげでそれが実現したので、今でも大変感謝している会社時代の恩人の一人です。

本の内容は、ビジネスにおける「残念な人」の例。いろいろなビジネス理論や、事例から、残念な人・企業を語ったビジネスエッセイという感じです。

Amazonのレビューを見ると、辛口の評が目立ちますが、それらを書いている人は、ちょっと読み方を柔らかくした方がいいのではないかと思います。

この本は「読み方」が大事な本だと思うのです。残念な人の事例を読みながら、「ああ、自分もこんなことしてるな」とか「自分は全然自分が見えてなくて、本当に残念だな」と内省をするための鏡なのです。本を読み終わって、自分のあり方に関して一つでも反省点が出てくれば、それだけで読む価値があると思います。私などは恥ずかしいくらい反省点があるので、こういう本はつらいのですが、大きな学びがありました。

以下、山崎さんの処女作。
日本で出版されたEラーニングの本としては、先駆的な本です。

eラーニング―実践的スキルの習得技法eラーニング―実践的スキルの習得技法
著者:山崎 将志
ダイヤモンド社(2001-01)
おすすめ度:4.0
販売元:Amazon.co.jp
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話題になっている日本のイルカ漁の潜入ドキュメンタリーです。
興味はあったのですが、今回iTunesでレンタルして見ることができました。

映画の内容は、「和歌山県太地町のある入り江("The Cove")で行われているイルカの『虐殺』を撮影するために、環境保護団体のグループがあらゆる手を駆使して現場に潜入し、ついにその実態をカメラにおさめる」というものです。

もちろん、『虐殺』"Slaughter"は、彼らの使う言葉であって、日本では単なる『イルカ漁』です。話の発端は、Ric O'barryというイルカのトレーナーです。彼は、60年代に"Flipper"というイルカが登場するドラマでトレーナーを行い、全米各地でイルカのショーが盛んに行われるきっかけとなった人物です。

彼は、Flipperで育てたイルカがストレスによって亡くなったこと(彼の話によると、そのイルカは自殺した)から、イルカを酷使することに罪悪感を感じるようになり、70年代からは一転してイルカの保護を推進する活動をはじめました。彼は、イルカが太地町で殺されている現場を世界に発信することによって、イルカの捕獲や猟をやめさせようとしたのです。

実際、彼らの潜入によりイルカ『虐殺』映像の撮影は成功します。ただ、私も日本人だからか、どうしてもこの見せ方はフェアじゃないなと思いました。

この映画をRic O'barryの贖罪のストーリーとしてみると、なかなかに感動的です。イルカと心の通う体験をした彼からすれば、イルカを殺すことなど、考えられないのでしょう。映画の前半では、イルカがいかに人間と同じような知性や心を持つ動物であるかがアピールされています。そういう文脈を与えられた後では、あのイルカ漁の映像は確かに残虐非道と映るでしょう。特に、イルカや鯨を食べない文化の人にとっては、目を背けたくなるシーンであるのは間違いないです。

この映画の監督は、そのシーンについて、「太地町の人たちは、政府と一緒になってイルカを虐殺していることを隠している」と言っています。それは、ちょっと違うと思うんです。イルカ漁を行っていること自体は、隠してないはずです。ただ、実際に血しぶきが飛び散る漁の現場は、一般市民に見せるようなものではないから、立ち入り禁止にしているだけだと思います。自分が漁師だったら、あんな場面を子供に見せたいとは思わないはずです。

「プライベート・スペース」という英語の2文字しか話さない日本人の方が、映画の中で揶揄されていましたが、食用の動物の屠殺現場は、すべて「プライベートスペース」だと思うんです。牛や鶏や豚だって殺される現場をわざわざ見たい人はいないでしょう。だから、隠すのは当然です。別に後ろめたくて隠しているわけじゃないはずです。我々は、自分たちが食べる焼肉やハンバーガーを供給するために、自分たちの見えないところで、血を浴びながら動物を屠殺してくれている人々に感謝こそすれ、非難するなどもっての他だと思います。

イルカ漁も同じで、単に公衆の場には不適切だから見せないだけです。そういう意味では、「日本政府と太地町民が結託して極秘に虐殺を繰り返している」というような政治サスペンス的な印象を与えているのはフェアじゃないなと。

水銀の件については、どの程度有害なのかを皆が知ることは有益だと思いました。
鯨肉を食べる人で、実際に水銀中毒の症状を見せている人はいないそうですが、監督がフォーカスすべきだとすれば、こういう論点だと思います。漁という供給サイドの問題よりも、栄養の供給源としての問題やイルカショーの問題などといった需要サイドに働きかける方が圧倒的にフェアです。

以上の感想を持ったわけですが、私が何より驚いたのは、この映画がアメリカで絶賛されていることです。これだけ、文化の違いがあって、いろいろな意見が飛び交うこの国で、今のところ私はこの映画に対する絶賛の言葉しか聞きません。Amazonのレビュー欄でも最高の評価をしている人があまりに多いことにビックリしました。

ちなみに、よく言われているような日本バッシング的な要素は一切ありません。いくつかの描写によって「日本人がバカにされている」と思われるかもしれませんが、それは個人がバカにされているのであって、日本が包括的にからかわれているような要素は見当たりませんでした。むしろ、太地町の美しさや、日本に対する敬意は随所に感じられました。

本当によくできている映画で、このプロジェクトを最後まで遂行した監督やRicの信念には、正直脱帽します。人に真実を知ってもらうために、世界を変えるために、勇気をもってこの映画を作ったこと自体にはとても刺激を受けます。

ただ、漁師や太地町の人たちを責める気には全くなりません。私の立場としては結局、捕鯨・イルカ漁賛成です。伝統を守るために、がんばっている方々を応援したいです。

ふと、古本屋に立ち寄って、2冊の本を手にしました。
第一冊目がこれ。

告白 (文春文庫)
告白 (文春文庫)
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この本、何気なく古本屋で手に取ったみたのですが、メチャクチャ面白いです。ちょっと数ページだけかじってみるはずが、喫茶店で一気に最後まで貪るように読んでしまいました。

大和銀行ニューヨーク支店巨額損失事件を引き起こした井口氏の告白です。この本、やたら文章が洗練されていたので、大学からアメリカ生活をしていて、その後銀行業務にどっぷり漬かっていた本人が本当に書いたのかな?と勘ぐってしまいました。全体の文章の構成(時系列的なコンテンツの配置)や事件の細部にわたる説明や所々に見られる「技あり」な比喩表現方法など、自分の目からするとあまりにもうますぎて、アマチュアのライターでは絶対に書けないのではないかと疑ってしまいました。もしプロのライターが手を加えたとしたら、逆にそのプロのライターは、他にどんな著作を書いたんだろうと、興味を持ってしまいました。

あちこちで、ニューヨークの聞きなれた地名やストリート名が出てきたので、事件の情景が一つ一つ思い浮かび、よりリアルに迫ってきたのも、自分にとってこの本が面白かった要因の一つです。あの時、あの場所で、あんなことが起きていたんだと…自分も同じような立場に追い込まれていたら、同じような行動をとっていたかもしれない、そう思うとゾッとします。現在の金融機関のガラス張りの管理体制だったら絶対に短期間でバレていたはずの無断取引を、彼は12年間も隠し通したのです。最初は、5万ドルの損失を取りかえそうと行ったことが次々と裏目に出て、損失は最終的に11億ドルにまでなってしまうのです…想像を絶します。

表紙の絵は、おそらく事件当時にNew York Timesで使われたという本人の学生時代の写真です。無垢な23歳・マッシュルームカットの写真は、この男が11億ドルもの巨額損失をひきおこしたという事実と対比されて、逆に不気味な雰囲気をかもし出しています。


奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ
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先ほどの井口氏の本を読んだ後は、「やっぱり、会社は社員の管理体制をしっかりしないとな」という読後感で一杯でしたが、この本は、完全にその逆をいくものでした。
自分自身、同じタイミングでこの一見相反する2つの本を買っていたことに驚きました。この本の著者リカルド・セムラー氏(セムコ社CEO)は、経営をする上で、従業員に対するコントロールを完全に手放すべきだ、ということを主張し、実際に経営の場で実践して成功を収めています。

会社で働く従業員一人一人を良識のある「大人」とみなし、ほぼ全てのオペレーションを、6-10人単位の集団ごとに責任を移譲してしまうのです。この会社では、出勤時間や仕事内容、さらには給料まで従業員が自分達で決めてしまいます。事業計画、売上目標、ミッションステートメントやクレドも全くなしです。そんなことしたら、従業員に好き勝手に会社を利用されてしまうのではないか、と思うかもしれませんが、このセムコという会社では、きちんと機能しているらしいのです。

あまりにも違う世界が描写されているような気がして、そんなことが果たして可能なんだろうかと最初は眉唾ものでした。しかし、本を読み進めていくにしたがい、具体的事例の数々によって、否が応でも納得させられている自分に気づきました。社員が不正を働いたことも当然あったそうです。しかし、それは当事者同士で問題を解決させ、経営者として、それを契機にコントロールを押し付けることはないそうです。

先ほどの本に述べられている大和銀行の事件も、セムラー氏であれば「ウチの会社でそんなことは起きるはずがない」と言うでしょう。つまり、心から自分がやりたくて就いた仕事で、その内容に誇りを持ち、売上目標を自分で決めていて、会社から押し付けられるものが何もない状況であれば、無断取引をするなど、トレーダーにとって何の意味もないことだからです。

数々の成功者の本を読んで、今まで疑問に思ってきたことがあります。成功の尺度として、たくさんのお金を持っているとか、大きい家や良い車を保有することを良しとし、中にはそれをことさら誇張する経営者がいます。ところが、それを以って皆の模範になるのは、無理があるのではないかと思うのです。物質的な豊かさを手に入れることができなければ、即人生が不幸であるということなのでしょうか。それならば、全ての人が幸福を享受することはできない、ということです。そんな立場を経営者自身がとっていたら、そこで働いている従業員は、「全員が勝つことのできないゲーム」を強いられ、敗北の恐怖におびえながら仕事人生を送ることになりそうです。

「不労所得を得て、幸せなお金持ちになろう」みたいなことが数年前に流行しましたが、あまりの思想の浅さに、私自身は辟易します。こういうスローガンを掲げる人は、意図はしていないと思いますが、実は全ての人が勝てるわけではないゼロサムゲームに人を誘っているのです。一見、明るいその言葉の影には、勝ち負けの世界があり、その裏にあるのは、敗北に対する恐怖と不安です。

私は不労所得が悪いと言っているわけでは全くありません。ポイントは、提案しているゲームの本質が「お金を得る」ことなのか、「自己表現をする」ことであるかということです。前者は全ての人が勝てないゲーム、後者は全ての人が勝てるゲームです。これによって、決定的に幸福度が変わってくると思うのです。

私は、仕事(もしくは人生)の醍醐味は、仕事自体を自分の自己表現と完全に一致させることだと思っています。自分を表現することが、そのままお客様への貢献になる。お客様への貢献が、報酬となって返ってくる。仕事で幸福をもたらすのは「これだけ」だと思うのです。報酬は二の次で、自己表現が第一、この順序が決定的に重要だと思います。

自己表現は、誰でも、どんな職業でもできます。新しい事業に挑戦したい!ということが自己表現だという人がいます。お客様と会話をしたい、接客をして気持ちよくなった欲しいということが自己表現の人もいます。データエントリや事務的な仕事をすることや、掃除をすることが自己表現だという人もいるでしょう。それぞれの性格によって、どんなことが充足感をもたらすのかは違ってくるはずです。

セムコ社のマネジメントは、まさに全ての従業員に自己表現の機会を提供し、徹底的に満たしてくれるやり方であると思います。こんなすばらしい企業を作り、現在も維持しているセムラー氏に敬意を表したいです。

この本の中で、元GEのジャック・ウェルチ氏の「下位10%のパフォーマンスの従業員はクビにする方針」を断罪している箇所がありましたが、このくだりは圧巻です。

ぜひ、皆におすすめしたい本です。

Michale Bubleにハマってます。

彼はカナダ人、名前の発音は「ブーブレィ」のレを強調します。
アメリカではかなりメジャーです。「最近の曲が良く分からない」という人も、彼の曲はちゃんと良い曲として聞けるはず。Mixiに266人しかファンがいなかったので、ビックリしました。

彼は、絶対日本でもヒットすると思います。
ぜひ、注目してください。



今、ハマっているのがこれ。

Pandora
"It's a new kind of radio - stations that play only music you like"

友人のNateがBlackberryでこのアプリを利用していたのですが、「すごくいいから試せ」と言うので自分も、iPhoneにアプリをインストール。

有線放送とか、ラジオの音楽番組ってありますよね。基本的にはそういう形で次々と曲を流すサービスです。でも、普通のラジオ番組と何が違うかというと、「自分の好きそうな音楽」を探し出して、提供してくれる点です。

使い方は、こうです。私は、Billy Joelが好きなので、"Billy Joel"と入力します。そうすると、"Billy Joelっぽい"音楽がずっと流れることになります。

この例で実際に試してみると、一曲目は、Billy Joelの"Keeping the Faith"という曲が流れます。一曲目が終わると、今度はElton Johnの"Don't let the sun go down on me"が流れます。その後は、Bruce Hornsbyの"The Way It Is"。さらにその後はThe Beatlesの"In My Life"。こうして、次々とBilly Joelっぽい曲が流れるわけです。
全部、何となく曲の調子などがよく似ています。

歌手でなく、具体的に「この曲と似たような曲をもっと聴きたい」と思えば、最初の入力画面で曲名を入力すれば良いのです。そうすると、その曲と似たような曲がランダムで次々と流れます。例えば、Jamiroquaiの"Canned Heat"を流すと、その次の曲はMaroon 5の"This Love"という風に(何となく似てますよね)。

このサービス、何がそんなに良いのか。

今の時代、好きな曲だったら大抵の場合YouTubeにアップされているし、iTunesで買うこともできます。でも、それは聴きたいと思ってその曲を選んで聴いているわけで、新鮮さ自体はないのです。ラジオを聴いている時の「あ、この曲いいな〜」という驚きや偶然性が全くありません。

でも、Pandoraだと、自分の好きなタイプの曲をずっと聴けると同時に、名曲と出会う時のワクワク感や偶然性がうまく演出されます。たまに、「ああ、この曲は、この人たちが歌ってたのか」ということがわかったりと、発見があります。

ラジオを聴いてしまうと、全く興味のないジャンルの曲もどんどん流れるので、退屈してしまう。CDやiTunesだと、すでに流れる曲を知っているので、新鮮味はない。そんな微妙なわがままを持つ人に、ピッタリです。

Web上でも利用できるし、iPhoneやBlackberryでは、データ通信で音楽が自動的にダウンロードされ、本当にラジオのように聴くことができます。


リーダーのあり方―大変革期と新・上に立つ者の人間学リーダーのあり方―大変革期と新・上に立つ者の人間学
著者:船井 幸雄
販売元:PHP研究所
発売日:1998-08
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ざっくばらんに話そう 勝つための方法―船井幸雄のヒント (船井幸雄のヒント)
著者:船井 幸雄
販売元:中経出版
発売日:1998-06
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最近、船井幸雄氏の本にハマっています。
もともと、前のコンサルティング会社に入社した頃は、「船井総研ってなんとなく怪しいな」(失礼!)と思って勝手に敬遠していました。なぜ、自分から遠ざけていたのか、自分でもよく覚えていません。

その頃は、大前研一氏を神としてあがめていたので、彼の論理的な文章は好きでしたが、船井氏の説く曖昧な「気」だとか「エヴァ」だとかが妙に怪しく聞こえたのでしょう。一冊本を立ち読みして、興味を失ったような気がします。

ところが、その後船井総研のトップコンサルタントである五十棲剛史氏や千田琢哉氏の本を読むに連れて「船井総研、相当すごいんじゃないか」と思うようになりました。彼らの本は、どれも地に足が着いていて、中小企業が結果を出すために必要なマーケティングの考え方や具体的な実践方法が、どの本よりも説得力をもって書かれていたのです。

というわけで、船井氏の本をはじめてじっくり読んでみると、これがすごい…なぜ、もっと早く出会っていなかったのだ…と思います。本当に結果を出すには、データと論理だけじゃダメなんだな、ということが彼の本を読むとよくわかります。私の方も、何もわかっていなかったあの頃に比べると、多少論理じゃない部分も理解しようとするキャパシティができてきているのかもしれません。


「会計戦略」の発想法「会計戦略」の発想法
著者:木村 剛
販売元:日本実業出版社
発売日:2003-07-02
おすすめ度:4.0
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木村剛氏の本は昔から好きですが、この本は特に読み応えがあります。彼は、資本主義のしくみの本質をよく知っていて、それをうまく平易な(そして時に熱い)言葉で説明することに長けています。さすが竹中平蔵氏のブレーンです。

さて、この本は、会計の何たるかがわかる良書です。そもそも、なぜ会計をしなくてはならないのか、会計の本質とは何かを知る上で、絶好の入門書です。税務のための会計と、経営のための会計が違うというのは常識ですが、中小企業のオーナーとなると、ここら辺を履き違えている人が結構多いのも事実です。この本は、資本主義制度を守る会計というものの重要性を学ぶ上で、そして、自分のビジネスの「スコアカード」を正しくつける上で、絶好の教科書になると思います。おすすめです。


金閣寺 (新潮文庫)金閣寺 (新潮文庫)
著者:三島 由紀夫
販売元:新潮社
発売日:1960-09
おすすめ度:4.5
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三島由紀夫の傑作。爆笑問題の太田が数週間前のPodcastで薦めていたので、買ってみました(ちなみに太田のファンです)。日本に行く飛行機の中で読みましたが…すごい…。読みながら、唖然としました。
私が三島氏の本を読んだのは、恥ずかしながらこれが初めてだったのですが、何しろ文章が綺麗なのです。美しいのです。彼がやたら「美」にこだわっていたのは聞いたことがありましたが、これを読んでいると、本当にそれが表現されています。特に、この小説では、「光」と「闇」の光景が鮮やかに描かれていて、まるで映画を見ているかのように、その場面ごとの映像が脳裏に現れるのです。

そして、ここで表現されている「美」というのは、滅ぶ運命にあるものだけが、唯一持つことのできるものです。金閣寺は、悠久の時間の中でその場所にたたずんでいて、静的で永遠の存在のように思えます。その「美」は、主人公の置かれている状況によってどんどん変化していきます。最初は、金閣寺がまだ想像の中にいた時、絶対的な「美」として彼の中で存在します。実際に金閣寺を見ると、その想像は裏切られますが、その後戦争に入り、いつ空襲で滅ぶかわからない状況の中で、金閣寺は輝きを増します。その後、終戦を迎え、金閣寺はまた輝きを失います。そして、この物語の中で、最も金閣寺が光輝くのは、主人公が放火を実行するその直前なのです。

滅びに直面するものが最も美しい。桜を美しいと感じたり、自己が犠牲になることを美しいと感じる、日本人の美意識です。三島氏がボディービルディングをしていたのは、その腹に刃を立てることが前提だったという説も何となく納得です。傷つけられる運命、じきに滅びる運命の肉体だからこそ、益々美しいんだと。この本を30歳で書いたことを後で知りましたが、この世の中にはとんでもない天才がいたものです。


夢に日付を! ~夢実現の手帳術~夢に日付を! ~夢実現の手帳術~
著者:渡邉 美樹
販売元:あさ出版
発売日:2005-10-24
おすすめ度:4.5
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渡邉美樹氏の本。私は心から渡邉氏を尊敬しているので、ここに書いてあることを愚直に実行しています。メディアの前面に出てくる経営者はよく批判・批評の対象になります。彼もたくさんの人と利害関係を持ってきたわけですから、例外ではありません。しかし、渡邉氏はそれでも前進し、世の中に違いを生もうとしているし、その真摯な姿勢は、信頼に値すると思っています。最後は、それが大事だと思うわけです。真摯さがあるか、そうでないか。


SUPERMARKET FANTASY [通常盤]SUPERMARKET FANTASY [通常盤]
アーティスト:Mr.Children
販売元:TOY'S FACTORY Inc.(VAP)
発売日:2008-12-10
おすすめ度:4.5
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最後、本ではありませんが、Mr. Childrenのアルバム。遅ればせながら、東京で手に入れました。すばらしいです。Washington DCの友人A氏が「今回のはどの曲もいいよ。変な曲がない」と言っていましたが、まさしくその通り。「みんなのために作った」という感じが伝わってきます。個人的には「東京」「エソラ」「旅立ちの唄」が良かった。

もちろん「GIFT」もいいです。
下のPV、結構感動しました。笑顔があふれてますね。

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